怪異を語れば怪異が至る
12月16日(水)
御伽婢子・156 最終回
怪異を語れば怪異が至る
昔から怪しい話し、恐ろしい話しを100話すれば、怪しいこと、恐ろしいことがおこると言われている。
100物語をするには、方式がある。月の暗い夜、行灯に100筋の灯を点し、その行灯には青い紙を張るのである。ひとつの話しが終わるごとに、灯をひとつずつ消していく。そうすると終わりごろには座は暗くなり、青い紙に怪しい影が映り、不気味な気配が漂ってくる。
下京辺りの人が5人集まり、方式の乗っ取って、100物語をした。それぞれが着ているものも、青い小袖であった。
話が進んで、6.70話におよぶころは、春なのに、風が激しくなり、雪さえ降ってきた。その頃の気候にはない寒さで、髪の付け根に沁みるようにぞくぞくとしてきた。
窓の外にちらちらと光がさし、幾千万の蛍が飛ぶようで、それがついに、部屋の中に入ってきた。丸く集まって、人間の身長ほどの直径の鏡のようになり、毬のようになる。あるいは砕け散って今度は白い塊になり、天井に張り付き、畳の上にどさりと落ち、雷のような音がして、それは消えた。
5人は5人とも気絶してしまった。家の者に助けおこされてどうと言うこともなかったが、100物語のせいである。
諺に言う。日中に人の悪口を言うなかれ。言えば害が自分に及ぶ。夜中に鬼を語ることなかれ。語れば必ず怪異に至る、と。
したがって、この物語も100話に満たずして、ここに筆を留める。
完
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