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2014年9月16日 (火)

かまくら伝説 第7回

前回までのあらすじ

 父の郷里へ来た慎君は、かまくら見物に出かけ、不思議な少年に会う。その少年の導きで、慎君は900年前の少年、道太と同化する。道太は源義家軍に属し、清原家衡軍と戦っている。正月を迎える2,3日前、義家軍の陣は破られ、皆ちりじりに逃げる。道太も足に怪我を負って、目の前に現れた雪のほこらに入り、敷き藁の上に倒れ込み、深い眠りに落ちる。

     雪のほこら(2)

 どれほどの時間がたったのだろうか。太ももの痛さで道太は目を覚ました。誰かが傷の手当をしている。どこかで見たことのある少女だ。
「しず・・・・しずだね。助けてくれたのか?」
 しずは、透き通るほど白い顔をしていた。道太の傷口を洗い、貝殻に入れた薬を塗り、布切れで包帯をした。そして、つぶやくように言う。
「痛いでしょう? 痛いでしょうね・・・。私はもっと痛かったの」
 傷の手当を終えると、しずは一度外へ出て、すぐに、木の椀を抱えて戻ってきた。そして、黙ってその椀を道太の前に置いた。暖かい芋粥だった。道太はその芋粥を食べると、再び眠りに落ちていった。

 
「今度の戦いで義家軍はさんざんにやられたらしい。これでいくさが終るといいね」
「いや、終らないだろう。義家様はご無事らしい。清原軍の疲れ切っていて追い討ちする力はないらしい。」
 外の話し声で、道太は目を覚ました。
「それではいったい、このいくさはどうなるのかね」
「そうさねえ。もとはといえば、義家様が清原氏の内輪もめに手を出したからだが・・・」
「義家様は、ずっと前に、清原氏に助けてもらったことがあるんだってね」
「そうなんだ。義家様の父、源頼義様と安倍氏のいくさで、清原氏に助けてもらったんだ。今度は、その清原氏を討とうというのだからね。清原軍では、義家様のことを、恩知らずといっているそうだよ」
 道太はこれまで、義家様のすることを疑問を持ったことはなかった。常に正しいものと思っていた。義家様を恩知らずという人がいるなど、考えられないことだった。
「それにしても、こんないくさは早く終ってもらいたいねえ」
「まったくだ。この前など、敵と間違えられて殺された娘がいるんだ」
「殺したのは義家軍かい、それとも清原軍・・・」
「それは分からない。だけど、どっちにしても、私たちには同じことさ」
「まったくだ」
「こんなところで立ち話をしていると、私たちもどちらかの敵と思われるかもしれない、早く帰ろうや」
「そうだね。くわばらくわばら」
 それっきり、外は静かになった。

 しずがまた芋粥を持ってきた。それを食べると、不思議に脚の痛みが引き、道太は急に元気が出た。疲れもすっかり取れている。
「道太様はもう歩けますね。でも、私は直らなかったの」
「え? しずも怪我をしたのか?」
 しずはそれには答えず、雪よりも白い顔を伏せた。
 しずが出て行ったあとで、道太も外へ出てみた。外は静かに雪が降っている。近くにしずの家があるはずだと思って見回したが、それらしい家は無く、あたり一面、白一色の雪原である。不思議に思って振り返ると、さっきまで入っていた雪のほこらが消えているではないか。まるでキツネにつままれたようで、道太はしばらく、ぽかんとその場に立ちつくした。

                     続く

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