« 一人吟行 | トップページ | マンションの庭の手入れ »

2014年9月17日 (水)

かまくら伝説 第8回

前回までのあらすじ

 父の郷里に来た慎君は、横手のかまくら祭りで、不思議な少年に会い、その導きで900年前の道太という少年に同化する。道太は源義家と清原家衡との戦いで負傷し、雪原の雪のほこらに倒れ込む。そこで、里の娘しずの手当てを受け、回復する。道太が雪のほこらを出て振り返ると、雪のほこらは消えている。

      雪の陣

 雪が降る。昨日も、今日もしんしんと雪は降り続く。
 義家軍は陣を立て直さなければならない。武将たちはばらばらになって、あちこちの農家の納屋などに潜んでいる。道太は連絡係だ。いくさに嫌気がさした武将には、父の道行きが説得に行った。だが義家はこんな雪の中で、いったいどんな陣を作ろうというのだろうか。
 義家は武将たちに、雪のほこらを作らせた。雪を積み上げて横から穴を掘り3,4人が中に座ったり、横になったり出来るほどの雪の家を作るのだ。中に藁を敷き、入り口を筵で塞げば、中は思ったよりも暖かい。道太が雪のほこらで過ごしたことを、父の道行きに話したので、道行が思いついたに違いない。雪原にいくつもの雪のほこらを作って、義家の陣ができあがった。
 雪の陣が完成した晩、義家は武将たちに、餅と甘酒を配り、遅れの正月を祝った。武将たちは、雪の下から掘り出した石や土で、ほこらの中に囲炉裏を作っている。その囲炉裏で餅を焼き甘酒を温めて暖を取るのだ。武将たちの弓や槍は、ほこらの外の雪に差して立ててあった。
 道太は雪の陣の見張りをするようにと命じられた。
 一人の武将が言った。
「見張りの間は、歌をうたえ。歌が聞こえている間は、何事もなく見張っていると分かる。歌が途切れたら、何かが起こったのだとわかる。だから、見張りの間は歌をうたえ」
 道太が見回りを始めると、父の道行がやってきて声をかけた。
「道太、お前が傷の手当てを受けたという娘のことだが、娘の霊魂だったかもしれないね」
「霊魂? それはなぜですか」
「生きている娘だとしたら、不思議すぎるじゃないか。ほこらに入るときは、声だけ聞こえて姿は見えなかったのだろう。まわりに家がないのに、暖かい芋粥を運んできたと言うのも変だ。それに、ほこらを出たら、何もかも消えてしまったというじゃないか。結局お前は、ほこらの中でしか娘を見ていないのだ。しかも、本当は見えないほこらだ」
「・・・・」
「霊魂だったのだよ。この前のいくさでは、裏山の辺りで討たれた娘がいるそうだ。裏山の麓まで逃げたものがいて、誰か人影が見えたので、、敵かと思って槍で突いたそうだ。ところが、倒れたのは女の子だったらしい。それが、お前の言っているしずという娘だったのではないか」
「・・・・」
 道太は石を飲み込んだような重い気持ちになった。そういえば、思い当たることばかりだ。雪のほこらでのしずと、蛍を捕まえていたしずとでは、まるで別人のようだった。妙に大人びていたし、顔の色も透き通るほど白かった。
 道太は、体中の力が抜けていくような気がした。
「そんなに気を落とすな。いくさというものは、まわりの人間を巻き込むこともあるものさ。あまり考えずに、今は見張りをやりなさい。それがお前の仕事だ」

                          続く 

|

« 一人吟行 | トップページ | マンションの庭の手入れ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/57411690

この記事へのトラックバック一覧です: かまくら伝説 第8回:

« 一人吟行 | トップページ | マンションの庭の手入れ »