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2014年9月18日 (木)

かまくら伝説 (第8回)

前回までのあらすじ

 父の郷里へ来た慎君は、横手のかまくら祭りで不思議な少年に会い、その手引きで900年前の少年、道太に同化する。道太は源義家の家来である。負傷して、しずという里の娘に助けられたが、そのしずは、いくさで殺された亡霊だったらしい。

      雪の陣(2)

 しきりに喉が渇く。道太は足元の雪を一掴み、口の中に押し込んだ。
 降りしきる雪の向こうに、しずの姿が浮かび上がる。しずのまわりの雪が、茜色に変わり、赤や黄色や紫に変わった。蛍だ! 降る雪がすべて蛍に変わった。
「あは、うふ、ふふふふ」
 初めてしずにあったときの明るい声がして、しずが蛍を追っている。
「しず・・・」
 思わず道太が呼びかけると、
「私はもっと痛かったの、私は直らなかったの」
 という声がして、しずも、蛍も消えてしまった。
 道太は我に帰って、もう一度雪を飲み込んだ。何度雪を飲み込んでも、喉の渇きは取れない。道太は初めて、心の底からいくさを憎んだ。

 雪のほこらからは、甘酒を酌み交わす、武将たちのざわめきが聞こえてくる。道太は、雪のほこらをまわり始めた。しずの幻を振り払うように、道太はうたう。

 用心めぐり
 用心めぐり
 寒鍋かけろ
 辛酒かけるな
 甘酒かけろ
 餅あぶれ
 ほーい ほーい

 雪は降り続いている。夜は更ける。雪のほこらのざわめきも消え、武将たちは眠りに落ちた。道太の歌声だけが、何時までも、悲しげに響いていた。

                         続く

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