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2014年9月13日 (土)

かまくら伝説 その5

かまくら伝説 第5回

全開までのあらすじ

 父と共に鎌倉見物に来ていた慎君は、藁のみのや藁靴を身につけた不思議な少年に会う。そして雪原のカシの木の下で、900年前に源義家に同道した原島道太の心の中に吸い込まれていく。それから半年、今は夏である。道太は小川に足をつけて、寝ている。

       蛍の少女(2)

「あは、うふ、ふっふっふ」
 嬉しくて仕方がないというような少女の笑い声で、道太は目を覚ました。見ると、川の向こう岸で7,8歳くらいの女の子が、夕焼け雲を追いかけている。いや、夕焼け雲と思ったのは、蛍である。あたり一面が蛍の海だ。少女は、蛍を捕まえては、竹のかごに入れている。貧しい身なりだが、目のきれいな、可愛い少女だ。そばに、姉らしい人もいる。
 

 道太はゆっくりと体を起こした。
「あっ」
 道太に気づいて姉は一歩下がった。
「あっ」
 道太に気づいて、妹は一歩前へ出た。
「こんばんは」
 道太が声をかけると、妹は川のふちまで駆けてきて、道太がしているように岸に座り、流れに足を入れた。姉が困った顔をしているのには気にもとめず、道太と顔を見合わせると、にっこり笑う。道太もつられて笑い、少女に話しかけた。
「どこに住んでいるの?」
「うん、あっち」
 少女は川上の方を指さした。
「名前は?」
「あのね、しず・・・しずです」
「しずか、いい名前だ」
 大人ならきっとそういうだろうと思って、道太は名前をほめた。
「うん、いい名前でしょう」
 少女が答える。姉が少女のところまで来て、道太にお辞儀をした。そして、
「さあ、帰りましょう」
 と、しずをうながした。しずはそれにかまわず、
「お武家様はなんていうの?」
 と聞く。
「原島道太だよ」
「ふうん、は、ら、し、ま、どう、た、なの」
「原島道太様といいなさい」
 姉がしずの手を引いて立ち上がらせた。
「さよなら」
 しずがいった。
「さよなら」
 道太もいった。しずの姉がもう一度道太に、お辞儀をし、しずの手を引いて帰って行った。蛍の海の中でしずが振り返り、
「原島道太様」
 といって手を振る。道太は立ち上がって、二人を見送った。

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