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2014年9月11日 (木)

かまくら伝説 その4

かまくら伝説 その4

前回までのあらすじ

 慎君は父と共に、父の郷里である秋田の田舎の村にやってきた。村で「よんじゃめぐり」と言う子どもの行事を見た後、横手市の鎌倉見物にやってきた。そこで不思議な少年に会い、900年前の道太という少年に吸い込まれていく。

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 いくさはもう何年も続いている。源義家が東北地方の長官として京都からやってきたとき、原島道太は父の道行きと共に、義家に従ってやってきたのである。そのころ8歳だった道太も今は12歳になっていた。いくさは義家がこの地に着いてすぐに始まった。道太は、京都のことはもう思い出すこともない。生まれたときからずうっといくさをしているような気さえする。
 清原家衡軍は強力だった。何年も戦って、義家は家衡のたてこもる沼柵(ヌマノキ)を落としたが、家衡は落ちのびて、金沢柵(カナザワノキ)に入っている。義家軍は家衡を追って雪原を行進した。慎君がカシの木の下で道太を見かけたのはそのときのことだ。

 慎君が道太の心に入って半年が過ぎた。今はもう夏である。あいかわらず家衡は、太い柱をすき間なく並べて城のようにした金沢柵に立てこもっている。義家軍はどうしても金沢柵を落とすことが出来ないのだ。

 ここ何日か、うだるような暑さが続いて、両軍に目立った動きはない。
 ある日の夕方、道太は陣の裏山のほうに行ってみた。せせらぎの音をたよりに夏草をかき分けて進むと、両岸に青草の生い茂った小川に出た。道太は岸に座り、両足を流れに入れて、仰向けに寝転んだ。
 夕焼けである。茜色の雲が空いっぱいに広がっている。雲の色が見る間に変化していく。夕焼けの輝きを全身に受けながら、道太は目をつむった。まぶたの裏にまで夕焼けの暖かな色が伝わってくるようだ。体の芯まで夕焼けに染まるような気がする。日中の暑い盛りには静かだった小鳥たちも、しきりにさえずっている。
 見る間に、夕焼けの雲の動きがはげしくなった。茜色の雲がちぎれて、ちぎれた雲がまたちぎれて、ちぎれて、ちぎれて、小さな綿屑のようになって、ふわふわと舞い降りてくる。道太の上にも、裏山の森の上にも、義家軍の陣の方にも、金沢柵のほうにも、赤や、黄や、紫の小さな雲が、タンポポの綿毛のように漂いながら、舞い降りてくる。

                    続く

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