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2014年9月11日 (木)

かまくら伝説 その3

前回までのあらすじ

 慎君は父に連れられて、父の郷里に来ている。子どもたちが家の周りを回って鏡餅を貰う「よんじゃめぐり」と言う行事に興味を持つ。その後、横手のかまくら見物に出かける。そこで藁の蓑や靴を身につけた少年に会い、その少年のかまくらに入る。あたりのもやが濃くなって、何も見えなくなる。

     不思議な少年(2)

 急に空気が冷たくなったような気がして、慎君は首をすくめました。ばさりと音がして小さな雪のかたまりが足もとに落ちました。はっとして見上げると、大きなカシの木が枝を広げています。驚いたことに慎君と不思議な少年は、雪原の大きなカシの木下に立っているのでした。
「ここは何処だろう?」
 慎君がつぶやくと、
「さっきと同じところさ」
 と、少年が答えました。
「なんで? さっきかまくらに入ったのに・・・」
「かまくらのあった場所さ。ただし900年前のね」
「なんだって! 900年も前だって?」
 慎君はびっくりして辺りを見まわしました。しかしそこは、ただしんしんと雪が降り続く雪原でした。
 
「前を良く見てごらん」
 不思議な少年が言いました。慎君が目を凝らすと、何か黒いかたまりが、雪原を横切っていきました。なおも目を凝らすと、それはよろいかぶとに身をかためた武士でした。ミルク色のもやの中で、影絵のように、左から現れて、右に消えていきます。一人の武士が消えると、次の武士が現れます。次の武士が消えると、その次野武士が現れます。みな、弓を持ち、矢を背負っています。中には馬にまたがる武士もいます。やがて、ひときは立派な武士が現れました。
「戦争なんだよ。ほら、今そこを通っているのが源義家(ミナモトノヨシイエ)さ」
「源義家って、誰なの?」
「義家を知らないのかい。それじゃあ、源頼朝ならしっているだろう?」
「頼朝ならね。鎌倉幕府を開いた人だよね」
「そうそう。義家はね、頼朝のおじいさんのおじいさんさ。そのころ、日本で1番強いと言われていた武士なんだ。でも、今戦っている清原家衡(キヨハラノイエヒラ)もすごく強くて、さすがの義家も苦しんでいるんだ」
「ふーん」
「うん・・・あ、原島道行だ。馬の上で何か考え事をしながら通る武士がいるだろう。あの武士は作戦を立てるのが上手で、義家の相談相手なんだ」
 しばらく、誰も現れなくなりました。
「もう終わりらしいね」
「まだだよ。少し遅れて僕たちくらいの少年が来るはずだ。原島道行の子どもで、道太って言うんだ」
 話している内に眉が太く、気の強そうな少年が現れました。子どものくせに、大きな弓まで持っています。
「あれが道太だ。慎君、君にはあの少年の心の中に入ってもらうよ」
 霧が深く立ち込めて、不思議な少年の姿が消えました。慎君は体ごと道太の心の中に吸い込まれていきました。
          
                続く

 

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