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2014年9月 9日 (火)

かまくら伝説 その2

かまくら伝説 その2

前回のあらすじ

 慎君は父と共に父の郷里に来ている。雪の深い秋田県南部である。慎君は2階の窓から、子どもたちが「よんじゃめぐり」の歌をうたいながら、家々をまわって歩くのを見ている。慎君は「よんじゃめぐり」の意味を知りたいと思いました。

     よんじゃめぐり(2)

 子どもたちの歌声が、ますます近づいてきます。とうとう家の前まで来ました。おばあさんが鏡餅と小銭を持って、玄関の前に出ました。

   よんじゃめぐり
   よんじゃめぐり
   寒鍋かけれ

 子どもたちは歌をうたいながら、家の周りをまわります。腰まで雪に沈みながら、漕ぐようにしてまわるのです。

   しけえ酒かけな
   甘酒かけれ
   餅あぶれ
   ほーい、ほーい

 子どもたちは、家のまわりを2回まわってから、鏡餅を受け取りました。

「慎、今日は横手の『かまくら』だよ。お父さんに連れて行ってもらいなさい」
 子どもたちに鏡餅を渡して、家に入ってきたおばあさんが言いました。
「そうだな、慎に『かまくら』を見せてやるか」
 お父さんが言いました。
「お父さん『かまくら』ってどんな意味?」
「おや、また意味を聞くのかい。それも分からないんだよねえ」
 困ったな、と言う顔でお父さんが答えました。

       不思議な少年

 しんしんと雪が降ります。その雪の下で、横手市はかまくら祭りで賑わっています。

 かまくらは大きな雪のほこらです。雪を積み上げて、中をくりぬいて作った雪の家です。中は大人が立って入れるほどの高さがあります。真ん中に火鉢を置いて、まわりに3-4人の子どもが座れる位の広さがあります。
 かまくら祭りは子どもの祭りです。子どもたちはかまくらの中で餅を焼き、甘酒を温めるのです。かまくらの奥には水神様が祭られています。道行く人たちは、水神様におまいりし、甘酒を振舞ってもらうのです。
 慎君はお父さんに連れられて、かまくら見物に来ています。子どもたちに声をかけられて、水神様にお参りしたところです。お父さんが甘酒を飲んでいるうちに、慎君は外へ出ました。

 雪が激しくなりました。あたりはミルク色の濃いもやに包まれてしまいました。そのもやの中から浮き出したように、一人の少年が現れました。藁の雪蓑を被り、藁の靴をはいています。
「こんばんは。きみが慎君ですね。僕のかまくらに来てください」
「え? 僕は今お父さんを待っているんだ。だから行けないよ」
「きみは『よんじゃめぐり』の意味を知りたいんでしょう?『かまくら』の意味も知りたいんでしょう? だったら、僕のかまくらに来てください」
 それだけいうと、少年は慎君の答えも聞かず、くるりと向きを変え、どんどん歩き出しました。慎君は見えない糸に引かれるように、その少年についていきました。少年はずんずん歩きます。慎君はせっせとついていきました。まわりの景色はミルク色のもやの中です。慎君には少年の後姿しか見えません。少年は、いくらか片足を引きずっているように見えます。
 しばらく歩いて、少年は急に立ち止まりました。
「これが僕のかまくらだよ」
 少年の指さすほうを見ると、ミルク色のもやの中から、かまくらがひとつ浮かび上がりました。少年に促されてそのかまくらに入ると、ほかには誰もいません。慎君が水神様にお参りすると、少年は甘酒をくれました。それを飲むと、もやはますます濃くなって、不思議な少年さえも見えなくなりました。

               続く


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