« 布ぞうり | トップページ | 池のほとり »

2013年9月 5日 (木)

『里山資本主義』

9月5日(木)

Img033


『里山資本主義』 藻谷浩介・NHK広島取材班

 刺激的な本である。誰にでも読んでもらいたいような本だが、地方の小さな自治体の長などには特にお勧めだ。

 人間の価値を金で計るような風潮には10代のうちから違和感を持っていた。そんな人はきっと大勢いるのだろう。それから60年。世の中にはさまざまな変化がありました。土地神話の時代、投機の対象として土地が選ばれた。あれも変だと思いましたね。オランダのチューリップの球根が高値で取引されたこと、それが一夜にしてブームが去ったことを、私は本を読んで、たまたま知っていました。土地もそうなるだろうと思っていました。バブルの時代。リーマンショック。投資が投機になって、大金持ちになるのはマネーゲームをする人ばかり。犬の指を宝石で飾るような人が出てくる。そして貧富の差は広がる。

 どう考えても変です。アメリカ型の資本主義を全世界に行き渡らせれば、世界は豊かになるのでしょうか、今話題のNPPといったかな、あれだって、アメリカ型資本主義をもっと徹底して、その行き詰まりを早めるだけではないかと私には思える。

 安倍さんの政策は企業が儲けやすいように、そうすれば日本は豊かになる、と言っているようです。確かに企業が豊かになるのはいいですよ。その豊かさを少しは庶民に回してくれればね。経済が伸びている間、私たちは確かに豊かになりました。でも、それも頭打ちでしょう。資源を食いつぶしていつまでも伸び続けられるわけがない。成長が止まるとやっていけないような経済は、いずれ行き詰るしかない。

 

 思い出すのは、日本の農業政策。米あまりだからと言って打ち出したのが、減反政策でした。たとえば農薬を使わなければ補助金を出す、などという政策は政治家には思い浮かばなかったのでしょう。農薬を使わなくなれば、農薬を作っている企業は困るものね。今農産物の無農薬は立派な宣伝文句になりますが、この道を開いたのは、消費者であり、個々の農家なのですね。地産地消、これも同じうなものです。考えてみれば、こんなこともアメリカ型資本主義に対する小さな抵抗でした。

 アメリカ型資本主義を残否定することは不可能だし、確かに便利な面を持っている。しかしそれだけでは行き詰る。そこで出てきたのが『里山資本主義』。

 オーストリアでは原発を持たない、稼動させないと言うことが、憲法で決められているのだそうです。そこでどうするか、木を徹底的に利用するのだそうです。エネルギーとしても、建築資材としても木を利用する。
 集成材というのがあります。木の繊維にそって小さな木を張り合わせて厚い丈夫な板などにした建築資材です。最近この集成材を縦の繊維と横の繊維を組み合わせる方法に変えて、革命的な建築資材が生み出されたそうです。この集成材で5階建て、6階建てのビルが建ち、鉄筋コンクリートに負けない強度と、耐火性を備えているそうです。そういうビルがオーストリア、イギリス、イタリア現に建てられていると言うのです。
 これは、ここ10年くらいの間の変化だそうです。原発や石油に頼らないエネルギー政策を取りながら、オーストリアの個人の所得は、日本より上だそうです。
 日本はオーストリア以上の森林国。小さな自治体がその気になったら、できることはあるのではないか。

 実は日本にも、里山を徹底的に利用することで、町を立て直そうとしている人が何人もいて、じょじょに増えていると言うことです。
 その例の一つ。岡山県真庭市、銘建工業の中島さん。真庭の木で建築資材(集成材)を作り、出たくずでべレット(燃料)を作る。鉋屑やら樹皮やらを燃やして発電し、電気代はそれでまかない、あまりは電力会社に売る。そしていまや縦横の繊維を組み合わせた新しい集成材を作る。そして建築基準の見直しを迫っている。真庭市は中島さんたちの活躍もあって、活気を取り戻していると言う。

 とまあ、いろいろ考えさせられる本でした。

   秋の蚊に肩を刺されて畑仕事
   蒸し暑き秋なり今日も雨もよい

|

« 布ぞうり | トップページ | 池のほとり »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/53152075

この記事へのトラックバック一覧です: 『里山資本主義』:

« 布ぞうり | トップページ | 池のほとり »