« 人物練習帳など | トップページ | 少しだけ雪が積もった »

2010年2月 1日 (月)

影隠し地蔵縁起・10

2月1日(月)

影隠す地蔵縁起 第10回

    ~風は見ていた~

源爺の話・8

「春光さんにもせつ子さんにも、それっきり会っていないだ。噂も聞かねえ。今はこの村に住む人も増えた。春光さんが作ろうとして作れなかったお地蔵さんを、わしはどうしても作りたかったんじゃ。あのときと違って、今は木を削る刃物も増えたしなあ」

「なるほど、そうだったのか。源爺がお地蔵様を造りたかったわけがよく分かっただ。ところで、このお地蔵様に名前を付けるのかね」

Tati0012 「うん、それだが、このお地蔵様には、村の人を守ってもらいたいだ。せつ子さんのこともあるだで、特に、誰かに追われる人がいたら後ろに隠れられるように、隠れたら体が見えなくなるようにと願いながら彫り上げたんじゃ。だから『身隠し地蔵』としたいんじゃ」

「身隠し地蔵かや。聞いたことのないような名前だなあ。だども、源爺がそうしたいというなら、それでよかべえ。なあ、みんな」

「うん、まあよかべえ」

誰も反対する人がなかったので、地蔵の名前は『身隠し地蔵』と決まった。

源爺の息子が、お地蔵様に向かっていった。

「お地蔵様、聞いての通りだ。村人を守ってくだされよ。逃げる人の姿を隠してくだされや」

 暖かな陽ざしの中で、心地よい風に吹かれながら、源爺たちは、ふんわりと酒に酔っていた。供えられた酒を飲んだのか、夕日に照らされたせいなのか、身隠し地蔵の顔もほんのり赤く、少し酔っているように見えた。

                    続く

|

« 人物練習帳など | トップページ | 少しだけ雪が積もった »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/33211255

この記事へのトラックバック一覧です: 影隠し地蔵縁起・10:

« 人物練習帳など | トップページ | 少しだけ雪が積もった »