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2010年2月 3日 (水)

影隠し地蔵縁起・12

2月3日(水)

影隠し地蔵縁起 第12回

     ~風は見ていた~

源義高と大姫・2

 義高が逃げたと知った頼朝は、家臣2人に義高を追わせた。その追っ手が、義高のすぐ後ろまで迫っていた。

 背後に見え隠れしながら、馬の蹄を響かせて近づいてくる二人の武将が追っ手であることは、義高にも分かっていた。もはや一刻の余裕もない。

 義高の行く手に川があり、川の向こうに山がある。あの山には入れば、身を隠す方法もあるだろう。しかし追っ手の蹄の音は、浅瀬を探して川を渡る余裕のないことを、義高に知らせた。義高は馬を下り、手綱を放した。そして農作業をしていた農婦に助けを求めた。

「追われています。隠れる場所はありませんか」

 農婦は近くの地蔵をさして言った。

「そこのお地蔵様の後ろに隠れるだ。昔から身隠し地蔵と言って、逃げる人を隠してくれるお地蔵様だで」

 その昔、源爺が掘った身隠し地蔵の陰に、義高は身を隠した。

 夕日が長い影を作っていた。春とはいえ、ときどき強い風が吹き、砂埃をあげている。

 追っ手たちは、すぐにその場にやってきた。そして農婦に言った。

「そこの女、12・3歳くらいの子供が、馬に乗って逃げていくのが見えなかったか?」

「おら、何も見なかっただ」

「見ないはずはあるまい。たった今、このあたりを通ったはずだ」

「おら、たった今ここさ来たばかりで、何も気づかなかっただ」

「何も気づかなかっただと。ぼんやり者めが。もうよい。さっさとどこかに消えてしまえ」

 農婦は追いやらって、追っ手たちは何か手がかりがあるだろうと、あたりを探し回った。

                  続く

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