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2010年1月 9日 (土)

かまくら伝説・6

1月9日(土)

かまくら伝説 第6回

蛍の少女・2

Tati0009

「あは、あははは、あははは」

 嬉しくて仕方がないというような少女の笑い声で、道太は目を覚ました。見ると川の向こう岸で、7,8歳くらいの女の子が、夕焼け雲を追いかけて言う。いや、夕焼け雲と思ったのは、蛍である。あたり一面が蛍の海だ。少女は、蛍を捕まえては、竹の籠に入れている。貧しい身なりだが、目のきれいな、可愛い少女だ。そばに、姉らしい人もいる。

 道太はゆっくりと体を起こした。

「あっ」

 道太に気づいて、姉は1歩下がった。

「あっ」

 道太に気づいて、妹は1歩前へ出た。

「こんばんは」

 道太が声をかけると、妹は川の縁まで駆けてきて、道太がしているように岸に座り、流れに足を入れた。姉が困っているのに気にもとめず、道太と顔を合わせると、にっこりと笑う。道太もつられて笑い、話しかけた。

「どこに住んでいるの?」

「うん。あっち」

 少女は、川上の方を指さした。

「名前は?」

「しず・・・しずです」

「しずか、良い名前だ」

 大人ならきっとそう言うだろうと思って、道太は名前を褒めた。

「うん、良い名前でしょう」 

 少女が答える。姉が少女のところへ来て道太にお辞儀をした。そして、少女の袖を引き、

「さあ、帰りましょう」

 と、しずをうながした。しずはそれにかまわず、

「お武家様はなんて言うの?」

 と聞く。

「原島道太だよ」

「ふうん。は、ら、し、ま、どう、た、なの」

「原島道太様と言いなさい」

 姉がしづの手を引いて立ち上がらせた。

「さよなら」

 しずが言った。

「さよなら」

 道太も言った。しずの姉がもう一度、道太にお辞儀をして、しずの手を引いて帰っていった。蛍の海の中でしずが振り返り、

「原島道太様」

 といって手を振る。道太は、立ち上がって二人をみおくった。

                 続く

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