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2010年1月30日 (土)

影隠し地蔵縁起・8

1月30日(土)

影隠し地蔵縁起 第8回

     ~風は見ていた~

源爺の話・6

 源吉は、もともとおしげが好きだったのだ。そのおしげが訪ねてきたのだから、嬉しいのなんのと言ったらない。

「おしげ、来ただか」

「きただよ、源吉」

「きただか」

「きただよ」

「おしげ、今日はな、初めて穫れた芋を食ってるだ。おしげも食えよ」

「芋が穫れただか」

「穫れただ」

 源吉が自分の椀をおしげに渡そうとした。

「おら、自分の椀を持ってきただ」

 おしげは自分の荷物の中から、椀を取りだした。おしげの荷物の中に、種籾や野菜の種があることを、源吉は見逃さなかった。おしげは、一緒に住むつもり出来てくれたのだと、源吉は思った。源吉は、何か言わなければならなような気がした。しかし、何を言えばいいのか分からなかった。

「おら、おら、一生懸命働くで・・・おら、一生懸命働くで・・・」

 源吉の口から、絞り出すような声が出た。それが源吉のプロポーズだった。

「おらも手伝うだよ」

 それがおしげの答えだった。

 二人の様子を頬笑みながら見ていた春光が、せつ子に目配せをして小屋にはいると、せつ子もその後に従った。

 夕焼けが秋の空を染めていた。風にそよいで、木々がわずかに揺れていた。

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