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2010年1月26日 (火)

影隠し地蔵縁起・5

1月26日(火)

影隠し地蔵縁起 第5回

    ~風は見ていた~

源爺の話・3

 源吉が家を出て、1日半歩いたところで、どうやら旅の者が言っていたらしい土地に着いた。瘤が二つある山があって、大きな川があって、野原がある。川は大きいが、浅瀬があって、向こう岸に渡ることが出来るようだ。

 源吉は川岸の小高い丘に登って、野原の方を見た。

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 春の風が心地よく吹いている。辺りを見まわすと、向こうの林の麓から、細い煙が上がっているのが見えた。よく見ると、どうやら小屋があるらしい。食事の支度でもしているのだろうか。旅の者の話しでは、まだ誰も住んでいないと云うことだったけれども、誰か住んでいるのかもしれない。源吉は、ほっとしたような、幾らかがっかりしたような気分になって、取りあえずその小屋まで行ってみることにした。

 原っぱと林の境に、その小屋はあった。

「誰か居るだか?」

 中を覗くようにして、源吉は声をかけた。

「はい」

 びっくりしたような顔をして、若い男が出てきた。続いて、若い女も顔を出した。

「あんたら、ここに住んでるだか?」

 無遠慮に源吉が聞いた。

「そうですが、あなたは?」

 若い男が丁寧に問い返す。

「おらは、ここに家を建てて、住もうと思って来ただ」

「そうですか、それならどうぞ、小屋の中で話しましょう」

 若い男は春光と名乗り、女はせつ子と名乗った。若い夫婦が二人で住んでいるのだという。この二人は、どことなく上品な雰囲気がある、と源吉は思った。二人は、去年の秋からここに住んでいるのだという。

                続く

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