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2010年1月24日 (日)

影隠し地蔵縁起・3

1月24日(日)

影隠し地蔵縁起 第3回

    ~風は見ていた~

源爺の話・1

 二瘤山の木々の間をさまよっていた風が、麓におり、二瘤川を渡って、村の広場の辺りを吹いている。草木は若葉に輝き、田植えの終わった水田には、苗が行儀良く列んでいた。風はさわさわと広場の上を吹きながら、人々の話を聞いている。広場の様子を、風は見ていた。

 広場には20人くらいの大人と、大人より多いくらいの子どもたちがいた。大人達は、ござの上に輪になって座っている。輪の真ん中には鍋がすえられ、、野菜や野ウサギの肉が、ぐずぐずと煮えていた。わずかばかりだが、どぶろくも用意されているようだ。

 子どもたちは、大人の膝に載ったり、背中にもたれかかったり、近くの木を揺すったり、木の枝にぶら下がったり、それぞれ、思い思いに動き回っている。落ち葉や石をはがして、虫を見つけようとしているものもいる。

 広場の端に、木で作られた真新しい地蔵が立っていた。

「まずは、源爺の作ったお地蔵さまに、魂を入れてもらいましょう。旅のお坊様、お経をお願いします。源爺、お地蔵さまに目を入れてください」

 広場の中央にいた、ひときわ大柄の男が言った。源爺の子供である。源爺と呼ばれたのは、源吉という名の老人だ。村の最長老なので、みんなに源爺と呼ばれている。村人がみな源爺と呼ぶので、彼の息子もまた、自分の父を源爺と呼んでいるのだ。源爺は歳をとってはいるけれど、がっちりした体つきで、手足なども太く、まだまだ元気そうだ。

 広場に集まった人々の中に、旅のお坊さんが混ざっていたようだ。粗末な、薄汚れた衣を身につけたお坊さんが進み出て、木で作られた新しい地蔵の前で、お経を読みはじめた。

 源爺は、いくらか曲がった腰を伸ばして、お地蔵さまの目にノミを当てた。

「さて、お地蔵さまに魂が入ったところで、源爺、どうしてこのお地蔵様を造ったのか、そのわけを聞かせたください」

 また、例の男が話しかけた。

「うん、そうさナア。せっかくだから、話しておこう。この村の始まりから話さなくてはならんな」

                 続く

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