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2010年1月25日 (月)

影隠し地蔵縁起・4

1月25日(月)

影隠し地蔵縁起 第4回

    ~風は見ていた~

源爺の話し・2

 おもむろに、源爺は話し始めた。

「そうさなあ・・・何年前になるか、忘れるくらい昔のことだ。わしの生まれた村は、山を幾つも越えた向こうにあったんじゃ。あるとき・・・そうじゃ、あれは18の時じゃった。秋の村祭りにやってきた旅の者が話してくれたんじゃよ。ここから幾つも山を越えて、1日半歩いたところに、瘤が2つ列んでいるような山がある。そのふもとに、田んぼや畑を作るのにいい土地がある、とな。山があって、大きな川があって、野原があって、まだ誰も住んでは居らんと言うことじゃった。わしは貧しい百姓の3男だったから、いずれ家を出なければならん。そんなところがあるなら、そこへ行こうと思ったんじゃよ。次の春になるのを待ちかねて、わしは一人で村を出たんじゃ」

「貧しい百姓では、次男や3男に分けてやれるほど田畑はないものなあ」

 源爺の息子が相づちを打った。

「そうじゃ。わしはいずれ村を出なくてはならんと思っていたから、前もって、鍬や、鉈や、鎌を用意しておいたんじゃ。それに、鍋もな。家を出る前に、幼なじみのおしげにだけは告げようかと思ったんだが、何だか言いづらくて、黙って出てきてしまった」

「おしげというのは、この前なくなった、俺のおっかあのことだね」

「そうじゃ。親からは、種芋や、そばの種、野菜の種などと、当座の食料をもらって家を出たんじゃ」

「親も心配だったんだね」

「まあそうだ。だけど、そんなに話の腰を折らずに、黙って聞けや」

 源爺は話しを続けた。それはおよそ、次のような話しだった。

               続く

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