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2010年1月 7日 (木)

かまくら伝説・3

1月7日(木)

かまくら伝説 第3回

不思議な少年・2

 急の空気が冷たくなったような気がして、慎くんは首をすくめました。ばさりと音がして、小さな雪のかたまりが、足元に落ちました。はっとして見上げると、大きなカシの木が枝を広げています。驚いたことに、慎くんと不思議な少年は、雪原の大きなカシの木の下に立っているのでした。

「ここはどこだろう?」

 慎くんがつぶやくと、

「さっきと同じところさ」

 と少年が答えました。

「なんで? さっきかまくらに入ったのに・・・」

「かまくらのあった場所さ。ただし900年前のね」

「なんだって! 900年も前だって?」

 慎くんはびっくりして辺りを見まわしました。しかしそこは、ただしんしんと雪が降り続く雪原でした。

Tati0009_2 

「前をよく見てごらん」

 不思議な少年が言います。慎くんが目をこらすと、何か黒いかたまりが、雪原を横切っていきました。なおも目をこらすと、それは鎧かぶとに身をかためた武士でした。ミルク色のもやの中で、影絵のように、左から現れて右に消えて行きます。一人の武士が消えると、次の武士が現れます。

Tati0010_2 

次の武士が消えると、その次の武士が現れます。みな、弓を持ち、矢を背負っています。中には、馬にまたがる武士もいます。やがて、ひときは立派な武士が現れました。

「戦争なんだよ。ほら、いまそこを通っているのが源義家(ミナモトノヨシイエ)さ」

「源義家って、誰なの?」

「義家を知らないのかい? 源頼朝なら知っているだろう?」

「頼朝ならね。鎌倉幕府を開いた人だよね」

「そうそう。義家はね、頼朝の、お爺さんのお爺さんさ。そのころ、日本で1番強いと云われていた武士なんだ。でも、いま戦っている清原家衡(キヨハラノイエヒラ)もすごく強くて、さすがの義家も苦しんでいるんだ・・・あ、原島道行だ。馬の上で何か考え事をしながら通る武士がいるだろう。あの武士は作戦を立てるのが上手で、義家の相談相手なんだ」

しばらく、誰も現れなくなりました。

「もう終わりらしいね」

「まだだよ。少し遅れて、僕たちくらいの少年が来るはずだ。原島道行きの子供で、道太って言うんだ」

 話しているうちに、眉が太く、気の強そうな少年が現れました。子供のくせに、大きな弓まで持っています。

「あれが道太だ。慎くん、君にはあの少年の心の中に入ってもらうよ」

 霧が深く立ちこめて、不思議な少年の姿が消えました。慎くんは、体ごと、道太の心の中に吸い込まれていきました。

                   続く

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