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2010年1月29日 (金)

影隠し地蔵縁起・7

1月29日(金)

影隠し地蔵縁起 第7回

     ~風は見ていた~

源爺の話し・5

 その日その日の空腹を、山の幸、川の幸で満たしながらも、3人はやがて収穫の時を迎える。

 ソバはよくできたが、サトイモは芳しくなかった。木の多いところは開墾することが出来ず、木の少ないところを畑にしたのだが、そんなところは石ころが多かった。切り開いた畑は、サトイモには向かなかったのである。種芋を残せば、サトイモの収穫は、3人の1食分にも満たないくらいだった。

 しかし、ヤマイモはあった。近くの丘や二瘤山の斜面から、源吉と春光は、沢山のヤマイモを掘り出した。

 そのヤマイモとサトイモで、3人は芋煮会をした。季節はもう秋である。よく晴れた日で、木々の葉は、赤や黄色に色づきはじめ、静かに風が吹いていた。

 3人は小屋の前に石を積んで竈とし、鍋をかけて、サトイモとヤマイモ、それに山から採ってきたきのこなどを入れて、ごった煮を作った。

 3人は、それぞれの幸せをかみしめていた。この土地は豊かな土地で、川魚が捕れ、山菜が豊富で、わなをかければ野ウサギも獲れた。食に困ると言うことはなさそうである。

 源吉には、この土地で百姓をやれるという自信が出来た。ソバはよくできたし、野菜も出来た。3人で力を合わせれば、畑はもっと広げることが出来る。そのうち、水田だって開けるだろう。

 一方、春光とせつ子は、源吉という頼りになる仲間が出来たことを、なによりも心強く感じていた。2人で馴れない田舎暮らしが出来るか不安だったが、源吉が居てくれるので、それが出来るように思えたのである。

 あるかなしかの風に吹かれ、秋の日射しを浴びながら、3人が少し華やいだ気持ちで芋を食べていると、遠くの方で、

「おーい」

 と呼ぶ声がする。3人が生活を始めてから、ほとんど人の通ることの無かった土地である。3人は思わず顔を見合わせ、立ち上がって声の方を見た。だれかがこちらに近づいてくる。どうやら若い女のようだ。

「おーい」

 女はもう一度声を上げた。源吉は、ぴくんと立ち上がった。

「おしげだ!」

 源吉が走り出した。

「源吉!」

 女も走り出した。

                   続く

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