かまくら伝説・2
1月6日(水)
かまくら伝説 第2回
不思議な少年
しんしんと雪が降ります。その雪の下で、横手市はかまくら祭りの賑わいです。
かまくらは大きな雪のほこらです。雪を積み上げて、中をくりぬいて作った雪の家です。中は、大人が立って入れるほどの高さがあります。真ん中に火鉢を置いて、まわりに3,4人の子供が座れるくらいの広さがあります。
かまくら祭りは、子どもの祭りです。子どもたちはかまくらの中で餅を焼き、甘酒を温めるのです。かまくらの奥には水神様が祭られています。道行く人達は、水神様にお参りをし、甘酒をふるまってもらうのです。
慎くんはお父さんに連れられて、かまくら見物に来ました。子どもたちに声をかけられて、水神様にお参りをしたところです。お父さんが甘酒を飲んでいるうちに、慎くんは外へ出ました。
雪が激しくなり、あたりはミルク色の濃いもやに包まれてしまいました。そのもやの中からうきでしたように、一人の少年が現れました。藁の雪帽子を被り、藁の沓を履いています。
「こんばんは。君が慎くんですね。僕のかまくらに来てください」
「え? ぼくは今、お父さんを待っているんだ。だから行けないよ」
「君は『よんじゃめぐり』の意味を知りたいんでしょう? 『かまくら』の意味も知りたいんでしょう? だったら、僕のかまくらに来てください」
それだけ言うと、少年は慎くんの答えも聞かず、くるりと向きを変え、どんどん歩きだしました。慎くんは見えない糸にひかれるように、その少年に付いていきました。少年はずんずん歩きます。慎くんも、せっせとついて行きました。まわりの景色は、ミルク色のもやの中です。慎くんには少年の後ろ姿しか見えません。少年は、いくらか片足を引きずっているように見えます。
しばらく歩いて、少年は急に立ち止まりました。
「これが僕のかまくらだよ」
少年の指さす方を見ると、ミルク色のもやの中から、かまくらがひとつ浮かび上がりました。少年は慎くんをうながして、そのかまくらの入りました。ほかには誰もいません。慎くんが水神様にお参りをすると、少年は甘酒をくれました。その甘酒を飲むと、もやはますます濃くなって、不思議な少年さえも見えなくなりました。
続く
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