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2010年1月 5日 (火)

かまくら伝説・1

1月5日(火)

かまくら伝説 第1回

Tati0010  

よんじゃめぐり

 慎くんはお父さんに連れられて、秋田県の南の端のおばあさんの家に来ています。そこは小さな村で、お父さんのふるさとです。

 雪が慎くんの背の高さよりも、もっと深く積もっています。こんなに深い雪を、慎くんははじめてみました。それが珍しくて、2階の窓際によって、外ばかり見ています。

 雪はしんしんと降っています。あたり一面がミルク色に煙っています。静かです。その静けさを破って、子どもたちの歌声が聞こえてきました。

「お父さん、あの歌聞こえる?」

「うた? うん、そうか。今日は『よんじゃめぐり』だったのか。まだ、あんな行事をやっているんだなあ・・・」

 お父さんは目を細くして、昔を思い出しているようです。

「ねえ、お父さん。『よんじゃめぐり』って何なの?」

「ああ、あれはね、旧暦の1月15日に子どもたちが集まって、村中の家を廻って、鏡餅をもらって歩く行事さ。あとで、みんなでお餅を食べるのが楽しみでねえ・・・」

「ふうん。歌がだんだん近づいてくるね」

 慎くんは窓から首を出して、耳を澄ましました。子どもたちの、元気の良い歌声が近づいてきます。

  ヨンジャメグリ

  ヨンジャメグリ

  カーンナベカケレ

  シッケェサケカケナ

  アマサケカケレ

  モチアブレ

  ホーイ ホーイ

「変な歌だなあ。どういう意味なの?」

 慎くんが聞いたので、お父さんがその意味を紙に書きました。

  よんじゃめぐり

  よんじゃめぐり

  寒鍋かけれ

  しっけぇ酒かけな(辛い酒かけるな)

  甘酒かけれ

  餅あぶれ(餅を焼け)

  ほーい ほーい

「よんじゃめぐりって言うことばの意味は?」

「うーん。よんじゃめぐりのことばの意味ねえ・・・分からないなあ。そう言えば、誰からも聞いたことがないなあ」

 そう言われると、慎くんはかえって知りたくなります。「ヨンジャメグリ、ヨンジャメグリ」と頭の中でくり返しました。

 子どもたちの歌声が、ますます近づいてきます。とうとう家の前まできました。おばあさんが、鏡餅と小銭を持って、玄関の前に出ました。

  よんじゃあめぐり

  よんじゃあめぐり

  寒鍋かけれ

 子どもたちは歌をうたいながら家のまわりをまわります。腰まで雪に沈みながら、漕ぐようにしてまわるのです。

  しっけえ酒かけな

  甘酒かけれ

  餅あぶれ

  ほーい ほーい

 子どもたちは家のまわりを2回まわってから、鏡餅を受け取りました。

「慎くん。今日は横手の『かまくら』だよ。お父さんに連れて行ってもらいなさい」

 子どもたちに餅を渡して、家に入ってきたおばあさんが言いました。

「そうだな、慎に『かまくら』を見せてやるか」

 お父さんが言いました。

「お父さん『かまくら』ってどんな意味?」

「おや、また意味を聞くのかい。それも分からないんだよねえ」

 困ったな、という顔で、お父さんが答えました。

                続く       

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