« 羽後町のあきたこまち | トップページ | 久しぶりの高円寺 »

2010年1月23日 (土)

影隠し地蔵縁起・2

1月23日(土)

影隠し地蔵縁起 第2回

   ~風は見ていた~

プロローグ・2

 頂上で充分休んでから、慎くんは山を降りはじめました。鼻歌でも歌いたい気分です。でも、山道を歩きながらうたうと、息が切れるので、小さい声で少しだけ歌いました。

 さっきから小鳥が1羽、慎くんの前にいます。慎くんが近づくと、ちょっと飛び立って、10㍍くらい前に止まるのです。そんなことをずっとくり返していて、まるで慎くんの道案内をしているようです。しばらくは小鳥のあとをついて歩きました。

 それからどのくらい歩いたでしょうか。慎くんは随分長い間、山を降り続けていることに気がつきました。これだけ歩けば、とうに麓に着いているはずです。どこかで道を間違えたのかもしれません。さっきまでいた小鳥も、いつの間にか見えなくなりました。何だか不安になってきました。

 でも、道を間違えたにしても、こんなに降りが続いたのだから、幾ら何でも、もう麓は近いはずです。そう思いながら歩いていると、うっかり気の根っこにつまずいて、慎くんは転んでしまいました。

 その時です。さっと風が吹いて、声が聞こえました。

「慎くん、良くここまで降りてきたね。君は千年以上も昔まで降りてきたんだよ」

「え? 誰? 誰か居るの? 千年以上昔って何のこと?」

「誰も居ないさ。私は風さ。誰にも姿は見えないよ」

「風? 風が話すの?」

「そうさ、私は風さ。二瘤山の麓を巡っている風さ。そして君も今、風になったんだ。さっき転んだときにね」

「ぼくが風になった?」

「そうだよ。だから、君の姿はもう誰にも見えやしない。この村の外れにはお地蔵さんが立って居るんだ。そのお地蔵さんにまつわる話を、君に見てもらおうと思ってるんだ。だから風になってもらったんだ。これから千年で、何が起こるかぜひ見てくれたまえ。ほら、すぐ下に川が見えるだろう? 川の向こうに原っぱが見えるよね。そしてそこに、何人も人が集まっているよね。まず、あそこから見てもらおうか」

                   続く

|

« 羽後町のあきたこまち | トップページ | 久しぶりの高円寺 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/33098322

この記事へのトラックバック一覧です: 影隠し地蔵縁起・2:

« 羽後町のあきたこまち | トップページ | 久しぶりの高円寺 »