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2009年12月 4日 (金)

瘤の中から蛇が出る

12月4日(金)

御伽婢子・147

瘤の中から蛇が出る

河内の国、錦郡の農民の妻の首の辺りに瘤が出来た。はじめは蓮の実くらいだったが、だんだん大きくなり、鶏の卵くらいになった。その後もどんどん育ち、カボチャほどになり、大きな冬瓜ほどになった。重くて立つことも出来ない。どうしても立つときは、その瘤を人に抱えてもらわなくてはならなかった。

不思議に、痛みはなかった。その瘤の中から歌や音楽が聞こえたりして、慰めになることもあった。

その後瘤の外側に、針で突いたような細い穴が無数にあいて、これから雨が降ろうかというときなどは、その穴から細い煙が立ち昇った。

家中の者はみんな怖れて、このまま家に置いていたのでは、どんな災いが起きるか分かったものではない、どこか遠くの山の中にでも捨ててこようなどと話しあった。

妻は泣きながら亭主に訴えた。

「私の病気は誰が見ても気持ちが悪いでしょう。私が山の中に捨てられれば、必ず死ぬでしょう。この瘤を切り開いても多分死ぬでしょう。同じ死ぬのならこの瘤を切り開いて中を見て下さい」

夫はもっともだと思い、新しいカミソリを良く研いで、瘤の上から下へ、縦に割ってみた。しかし血は少しも出ないで、中から飛び出たものがある。60センチくらいの蛇が5匹も出てきた。蛇の色は黒、黄色、白、青などである。みな鱗を立て、光りがある。家の者たちは驚いて、打ち殺そうとしたが、夫が止めた。

その時、庭に穴が出来て、蛇たちはその穴に入って。穴は深くて、底が知れない。

夫は神子を呼んで占ってもらった。神子は梓弓を立てて占ったところ、神がかりになって口走った。

「この女はねたみ深くて、かって雇っていた召使いを夫が寵愛したのを恨み、その首に噛みついたことがある。おはぐろの歯で噛みついたため首に毒が回り、召使いは死んでしまった。その恨みが深くて、今、仇を討っているのだ。たとえ一時助かったとしても、最後には殺して恨みを晴らす」

夫がいう。

「それは昔のこと、心をなだめて下さい。必ず僧侶を呼んで跡を弔いますから」

「その時の恨みは、骨の髄まで達している。しかし跡を弔ってくれるというならば、許しましょう。許すについては条件がある。法華経を書写して回向して下さい。妻の傷には胡桐涙(コトウルイ)という薬を塗りなさい」

といって神子は正気に返った。

いわれた通り法華経を書写して回向をし、妻の首に胡桐涙を塗ったところ、傷は消えた。その後、妻のねたみ心は治まったという。

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