« 人物練習帳・4 歩き方 | トップページ | ボラ修め 年賀状 »

2009年12月24日 (木)

本のないお話

12月24日(木)

本のないお話・1

終業式のあとで

Tati0012

 3年3組の教室はとても賑やかでした。今、終業式が終わったばかりです。終業式では、担任の山田美智子先生が、学校をやめて山梨へ行ってしまうと言う話しがありました。この学校では、担任が大抵2年くらい、同じクラスを受け持ちます。だからみんなは、4年生になっても、山田先生が担任になるのだとばかり思っていました。それなのに、終業式で、山田先生が学校を辞めると発表されたのです。

 教室のドアが開いて、山田先生が入ってきました。

「先生、どうして学校をやめるの?」

「なんで今までないしょにしていたの?」

みんなは口々に聞きました。

「今まで黙っていてごめんなさい。言うと寂しくなるので、わざといいませんでした。実は先生のお母さんがずっと、山梨の田舎に住んでいます。そのお母さんが歳をとって、体が弱くなったので、先生が一緒に住むことになったのです」

 先生が静かに話しました。

「先生が皆さんくらいの時、日本は戦争をしていました。それから、戦争が終わって、誰もが苦しい生活をしました。そんな中で、お母さんは苦労をして私を育ててくれました。今度は、私がお母さんの世話をしようと思います。ですから、田舎に行くことにしたのです」

「先生のお母さんは病気なの?」

和子が聞きました。

「ええ。悪いところもあるようです。先生は学校を辞めますが、皆さんは、今までと同じように、元気な4年生になってください。みんなのことは、何時までも忘れませんよ。でも、辞める話はそれくらいにしましょうね。落ち着いたら、先生が皆さんにお手紙を出します。皆さんも、きっとご返事をくださいね」

 みんなは、もっともっと話を聞きたいと思いました。でも、先生はそれ以上話してくれそうもありません。クラス中がシーンとしました。いつもは賑やかな正夫も、何だか淋しくなってきました。その淋しさがたまらなくなって、わざと大きな声で言いました。

「先生、今日は本を読んでもらう日です」

「あっ、そうだ。お話の日だ」

「本を読んでください」

 ひろしも、次郎も云いました。山田先生は1週に1度、みんなに本を読んでやっていたのです。みんなはそれを、とても楽しみにしていました。

 教室が少しザワザワしてきました。

「そうですね、お話の日ですね。だけど、今日は本を読みません」

いつもの、少しいたずらっぽい目をして、先生が言いました。

「ずるい。お話がなしだなんてずるいと思います」

びっくりするほど大きな声で、正夫が言いました。先生はクスリと笑いました。

「本は読まないけれど、お話はします。今日は先生の知っているお話をします。本のないお話です」

 みんなはお話が聞けると知って、ほっとしました。でも、本のないお話って、どんなお話でしょうか。クラス中が、まっすぐ先生の方を見ました。先生は静かに話し始めました。それは次のようなお話でした。

                   続く

|

« 人物練習帳・4 歩き方 | トップページ | ボラ修め 年賀状 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/32724110

この記事へのトラックバック一覧です: 本のないお話:

« 人物練習帳・4 歩き方 | トップページ | ボラ修め 年賀状 »