« 居場所 | トップページ | 浅井了意 »

2009年12月10日 (木)

鬼にたぶらかされる・1

12月10日(木)

御伽婢子・153

鬼にたぶらかされる・1

摂津の国(一部大阪、一部兵庫)の兵、小石伊兵衛は河内の国片岡の城に籠もった。しかし大将の松永は悪行を重ねるし、寄せ手は大軍で意気が上がっている。とても勝ち目はない、逃げるにしかずと思って、夜陰に乗じた城を抜け出した。

兼ねて打ち合わせた通り、弓削と言うところに隠れていた妻と落あい、夫婦で逃げた。妻は身重である。それも臨月だ。大和をめざして逃げたけれども、妻の足は重く、峠にかかったころには、疲れがひどかった。そこで妻を休ませることにしたが、もし兵士達に見つかっては拙いので、道から0メートルばかり、藪の中に入った。

暫くすると、泣きながら峠を登ってくる女がいる。その泣き声をよく聞くと、どうやら妻が使っていた女である。逃げる身であるから、あえて連れてこなかったのだ。それをわざわざ追いかけてくる、そのこころざしが可愛くて、伊兵衛は声をかけた。

女は喜び、恨み言を言った。

「なんで連れて行ってくれないのです。私は何処までも一緒にいたいと思っているのに」

女の心が嬉しく、これからは3人で逃げることにした。そこで休んでいるうちに、妻は急に産気づいた。夫の伊兵衛は何をしてよいか分からず、ただおろおろするばかり。女はかいがいしく働き、無事に妻の出産をすませた。

この女が来なければ、どうしてよいか分からなかった。よくぞ跡を追ってきてくれた。夫婦共に女に感謝した。夜が明けたら山の中の家を探し、頼み込んで、養生させてもらおう、と赤ん坊を抱きながら、3人で話しあった。

女が赤ん坊を抱き、女房は木の幹に体をもたれさせてまどろんだ。伊兵衛も眠った。

                      続く

|

« 居場所 | トップページ | 浅井了意 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/32560844

この記事へのトラックバック一覧です: 鬼にたぶらかされる・1:

« 居場所 | トップページ | 浅井了意 »