« 紅葉狩りと山の散歩 | トップページ | 福祉会役員会 »

2009年11月15日 (日)

幽霊の手紙・1

11月15日(日)

御伽婢子・113

幽霊の手紙・1

近江の坂本というところに、正木という金持ちが住んでいた。娘は竜子といい器量よしで、頭も良かった。そのため両親はことのほか可愛がり、物語の本などを買い与え、歌の道も教えていた。

隣に芦崎という家があり、数馬という、竜子と同じ歳の子供がいた。幼いうちは良く一緒に遊び、「大きくなったら結婚しようね」などといったりしていた。

さすがに年頃になると、遊ぶようなことはない。数馬は寺院の稚児となり、竜子は家に引きこもり、静かに暮らしていた。

数馬が帰宅したとき、竜子に2首の歌を書いた文を送った。

  人しれず結びかわせし若草の

     花は見ながら盛りすぐらむ

  しるらめや宿の梢を吹かはす

     風にかけつつかよふこころを

今でも貴女を思っていますという手紙を見て、竜子は嬉しくもあり、思うようにならないこころのうちを、歌に託した。

  月日のみ流れゆくゆく淀川の

     よどみ果てたる中の逢瀬に

  今はかく絶えにしままの浦におふる

     みるめをさへに波ぞただよふ

竜子が17歳になったので、親はよい婿を取ろうとしていろいろと話しをすすめるのだけれど、竜子はどれも断ってしまう。誰か好きな人でもいるのかと下女にそれとなく尋ねさせると、どうしても数馬と一緒になりたいという。

竜子が思い詰めているようなので、親は隣に申し込んだ。しかし数馬の親たちは、

「確かに数馬はいい男で才知もあるけれども、わが家は貧乏で、とても釣り合いが取れない」

といって辞退した。竜子の親は、

「いやいや、結婚は財産でするものではない。数馬さんの人柄を見込んでお願いするんのす。婚姻の費用などはすべて当方で負担します」

といって、2人の結婚を納得させた。

|

« 紅葉狩りと山の散歩 | トップページ | 福祉会役員会 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/32226651

この記事へのトラックバック一覧です: 幽霊の手紙・1:

« 紅葉狩りと山の散歩 | トップページ | 福祉会役員会 »