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2009年11月 5日 (木)

生まれ変わって契る・5

11月五日(木)

御伽婢子・128

生まれ変わって契る・5

前回までのあらすじ 豊田孫吉と懇ろになった女は、幽霊で、二人は前世で打ち首になった間柄だった。女は豊田が恋しくて、あの世から現れ、豊田と結ばれた。女は豊田に前世の出来事を語り、人の運命を語る。

女は続けて言う。

「私の冥土の暇はあと1年で終わります。天の定めには逆らえません」

その1年が過ぎた。女は気分が悪くなって床に伏せていた。豊田は医者よ薬よと手を尽くしたが、女は薬も受け付けない。

女は豊田の手を取り、

「昔共に打ち首になって100年以上過ぎました。このたびあなたと夫婦になりましたが、私はもう冥土に帰らなければなりません。思いは尽くしたのだから、悲しまないでください」

「もう少しここに残ることは出来ないのか?」

   名ごりをも惜しまでいそぐ心こそ

      別れにまさるつらさ成りけれ

と詠んで、女は壁に向かって伏せ、息絶えた。豊田は泣き叫んだが、その甲斐もない。豊田は、

   残り香になにしみにけん小夜衣

     忘れぬ妻と思いしものを

と詠み、野辺の送りをした。その棺があまりに軽いので開けてみると、衣だけ有って、屍はなかった。

豊田は出家して、四国、九州を回巡ったのち、中国に渡る。その後のことは誰も知らない。

                          終わり

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