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2009年11月 1日 (日)

生まれ変わって契る・1

11月1日(日)

御伽婢子・124

生まれ変わって契る・1

肥後の国に豊田孫吉という若者がいた。早く親に死なれ、独りで住んでいる。家は豊かである。孫吉は一人っ子だったので、親は大事に育て、学問などもさせ、諸先生の教えを受けていた。

ある夕方、孫吉が門の外に出ていると、上品な16-7歳の女が家の前を通る。べつだん派手な衣装を身に着ているわけではないが、姿形が美しい。

孫吉は女の傍により、袖を掴んで口説いた。女もすぐその気になって、二人は夜もすがら語らい、肌を重ねた。明け方には名残を惜しみながら女は帰った。

次の夜も、女はやってきた。孫吉は名前を尋ねたけれども、女は言を左右して答えない。親のこと、住んでいる家のことなども、教えようとしない。

「私が着ている小袖は色が褐色だし、蔦の唐草模様になっているでしょう。だから私のことは『褐子』とか『蔦子』と呼んでくださって結構よ」

と女は言う。何か子細があるのだろうと思って、孫吉はそのままにして置いた。それでも、女は毎晩やってきた。

しかしある夜、孫吉は酔った紛れに、

「私がこんなに思っているのに、あなたはまだ自分のことを秘密にしておくなんて、まだ心からうち解けてはくれないんだね」

   手まくらのうえにみだるる朝寝髪

      下には人のこころとけずも

と詠んだ。女恨めしげな顔色で、まだ分かってくれないのね、と言うように、

   手まくらをかわすちぎりの下紐の

       とけずと君がむすぼぼれつつ

と返した。

「もう隠さないわ。あなたと私は、ずうっと昔から知っている中なのよ。実は私、この世の人ではないの。でも、あなたをたぶらかそうとしているのじゃないわ。あなたとは深い縁があるのよ。そのわけを聞いてね」

と、女は前世の話しをはじめた。

                      続く

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