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2009年11月30日 (月)

天狗が塔に棲みつく・1

11月31日(月)

御伽婢子 13巻

  原作    浅井了意

  現代語訳 ぼんくらカエル

御伽婢子 通算143回

天狗が塔に棲みつく・1

寛正5年(1794年)4月京都の東北、糺す(タダス)の河原で猿楽能をしていた。観世音阿彌、その子又三郎をはじめとし、多くの役者が出て、大変な評判だった。京中の人々が上下の隔てなく、蟻のごとく集まり、星のごとく集って見物した。足利将軍家まで3度も見物に来たほどである。大名、小名など競って見物し、役者に金銭、小袖などを与えた。

その日、将軍はおいでにならなかったが、大名達は大勢来ていた。若殿達は桟敷を並べ、自分の家の紋所を印した幕を張り、上下の人々は押し合いへし合いして席取りに夢中になった。

やっと幕が上がり、三番叟の面箱を持った者が花道にさしかかった。人々が静まりかえって見ていたとき、桟敷の東の端から火の手が上がり、折からの強風に煽られてまたたく間に燃え広がった。

桟敷に持ち込んだ屏風や御簾、重箱や料理などはそのままにして、人々は我先にと逃げまどった。見物席のまわりをしっかり囲っていたので、入り口の潜り戸ひとつをめがけて人々は殺到し、踏み倒し、打ち転び、女子供は手足を踏みつけられ、骨折する者も多かった。中には髪の毛や小袖に火が点き、焼け死ぬ者もいた。中に腕力の強い者がいて、四方の垣を押し倒し、切りくじいたので、みんながやっと逃げることが出来た。

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