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2009年11月18日 (水)

幽霊からの手紙・4

11月18日(水)

御伽婢子・136

幽霊からの手紙・4

前回までのあらすじ 芦崎数馬は信長の延暦寺焼き討ちのとばっちりで、妻と別れ別れになった。妻を捜して信長の家臣佐久間信盛の陣に来たが妻は佐久間の寵愛を受けており、兄弟と偽り、夫婦の名乗りを上げることが出来ない。

更衣の時期になったとき。数馬は冬の小袖を脱いで、妹にやってくれるように人に頼み、歌一首を書いて襟の裏に包んで持たせた。

   色見えぬこれや忍のすり衣

      思いみだるる袖のしら露

貴女を偲んで泣いていますという歌に、妻の竜子も涙にくれた。小袖のお返しに帷子を上げると言うことにして、歌1首を衣の裏に縫いつけた。

  いかにして行て乱れむ陸奥の

    思いしのぶの衣へにけり

竜子も同じ気持ちであることを知り、数馬は胸が塞がり、思い乱れて嘆いた。そのためか重い病になった。竜子は数馬が病になったと聞き、佐久間に頼んだ。

「兄の病が重いと聞いています。私は兄を見舞いたいと思います。どうかこの世の名残に、今一度兄に逢わせてください」

佐久間の許可を得て、竜子は数馬の小屋を見舞った。数馬はうなされて、竜子の名前をうわごとのように言っている。竜子が、

「私はここにいますよ」

と言うと、数馬はむっくりと起き上がった。そして竜子の手を取り、大粒の涙を流し、ものも言わず、口ばかり動かして、そのまま息を引き取った。

佐久間は哀れがり、天王寺の後の山に亡骸を埋め、僧を雇って弔った。その後、竜子も悲しみのあまり体調を崩し、薬も受けつけなかった。そして佐久間に頼んだ。

「私はあなた様に従い、家を離れて他国を巡りました。身内は兄だけでしたが、その兄が尋ねてきてくれたのに、亡くなってしまいました。私の命も間もなく終わります。死んだら、せめて兄の側に埋めてください。あの世で話しなどいたします」

そして次の日に亡くなった。

佐久間は竜子の臨み通り、数馬の墓に並べて竜子を埋めた。

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