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2009年10月23日 (金)

了仙の貧窮 天狗道・3

10月23日(金)

御伽婢子・118

了仙の貧窮 天狗道・3

前回までのあらすじ 了仙は学識深く弁舌爽やかな僧であったが、生前は報われることなく、貧しい僧として終わった。行いは正しかったが、自分はすぐれているのに報われないという不遜な思いがあったので、死して天狗道に落ちた。了仙はあたかも出世したごとく輿に乗って、修業時代の学友栄俊に会う。そこで天狗道の話しをする。

仙の話しは続く。

「人間世界では、賄賂が有効で、媚びへつらうような者が出世する。公家でも武士でも同じである。そのため、誰にもへつらわず、正しく努力する者は世に出ることが出来ない。真に正しき者は、人に侮られ、公家も武家も出家も賢者も、痩せ衰えて、死んだところで人の知るところではない。こころざし邪な者やなんの取り柄のない者が、世の中でもてはやされる。そのため、世の中は何時も乱れている」

「私の落ちた天狗道では、すべてその人の器量によって職が定まる。世の貴賤はどうであれ、慢心のあった者はすべて魔道に落ちる。私は徳もなかったし、功もない。弁舌で人を打ち負かしたりしたが、虚しいものだ。今私は、自らの慢心の報いを受けるのだ。まあ、見ていなさい」

という。

了仙は栄俊の前で、見る見る翼が生え、鼻が高くなり、目から光を発して、すさまじい姿になった。空から鉄の釜がふらふらと降りてきて、その中に鉄の湯が沸き返っている。法師が一人現れて、熱湯を杯に入れて了仙に渡した。了仙はおそるおそるそれを飲み干した。すると了仙の内蔵は灼き爛れ、地に伏して消えてしまった。了仙の付き人たちも、すべて消え失せた。

夜はほのぼのと明け、気がつくと栄俊一人、江ノ島の砂浜に座っていた。

その後栄俊は、仏事を営み、後世を怖れ、道心深く諸国を行脚し、修行をしたということだ。

              御伽婢子 第10巻 終わり       

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