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2009年10月16日 (金)

幽霊と契る・2

10月16日(金)

御伽婢子・112

幽霊と契る・2

前回のあらすじ 上野の国、平井の城は上杉憲政の居城だったが、北條氏康に落とされた。そして北條新六郎が新城主となった。憲政には若くして死んだ美しい娘弥子がいた。語り継がれる美しさに、新六郎はたとえ幽霊でもよいから逢いたいものだと思慕をつのらせた。その願いが叶って新六郎は幽霊の弥子に会い、契りを交わした。弥子は、決して他人に言うなと念を押して帰っていった。

次の日の夕方、弥子はまた来た。夕方に来て朝に帰る日々が60日も続いた。

ある日、家の子郎党との世間話のうちに、新六郎はうっかり弥子のことを話してしまった。家の者たちは好奇心に駆られ、壁に穴を開けてのぞき見たが、女の声はするけれども姿は見えなかった。女は新六郎に恨み言を言った。

「あれほど人に言うなと言ったのに、なんで漏らしてしまったの? もう逢うことはできないわ」

    しばしこそ人め忍びの通い路は

       あらはれそめて絶え果てにけり

新六郎返し、

    さしもわがたえず忍びし中にしも

       わたしてくやしくめの岩はし

暫く人目をしのんで逢っていたのに、人に知られてはもう逢えません。忍び逢っていたのに、川の浅瀬の岩伝いに向こうに行ってしまうのですね。

女は泣きながら金の香合を取りだしていった。

「もしもこの先、私のことを思ってくださるなら、これを形見と思ってください」

新六郎は金銀珊瑚琥珀を交えて作った数珠を取りだして女に渡した。

「それにしても、この世の生を終えてから何時あなたと逢えるのですか?」

「甲子という年まで待ってね」

女は涙でそう言うと、霜が消えるように消え失せた。

                        終わり

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