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2009年9月30日 (水)

金閣寺の幽霊と契る.3

9月30日(水)

御伽婢子・101

金閣寺の幽霊と契る・3

前回までのあらすじ 中原主水は26歳に色好み。桜がまだ残るころの宵、金閣寺までやってきた。そこで出会った20歳の女は、金閣寺を建てた義満に仕えていた女の幽霊だった。二人は金閣寺の庇の下で酒を酌み交わす。

数杯の盃をかさねた後、女はしなだれかかって、

   明行かば恋いしかるべき名残かな

      花のかげもるあたら夜の月

主水も心引かれて

   いづれをか花は嬉しと思ふらむ

      さそうあらしとおしむこころを

誘う心に誘われる心、女が言う。

「あなたの歌は私の心を掴むのね。死んでから百年以上もたって引き返した私。あなたに抱いて貰えたら死んでも本望よ」

二人はむつまじく語り合い、月は西の山に隠れ、星が北の空に集まるころ、西の庇の方へ移った。女は切なく、やるせない風情で、二人は抱き合った。

春の世の習い、間もなく夜が明けて、鶏が朝を告げ、白い雲が峰にたなびくころ、互いに涙を拭いて別れた。

すっかり夜が明けてから、主水は金閣寺のまわりを見めぐって見ると、院のそばに古い卒塔婆が立っていた。こけむした墓の隣に、小さい墓も並んでいる。これは主が死んだのち、召使いも嘆き悲しんで死んでしまったので、人々が哀れに思い、傍に埋めてやったものらしい。

主水は、悲しくも哀れにも思い、家に帰ることも忘れ、その夕暮れもまた、闇の中に立っていた。すると、女もまた現れた。

                      続く 

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