雑感 ひげ長の国・1
8月17日(月)
精障者作業所Mへ。
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昨日の昼、何気なくテレビを付けたら、2人乗りの自転車で旅をする番組をやっていた。そして今流行の「布ぞうり」のことを「わらじ」と言っている。テレビに登場する人物が「わらじ」と言い、ナレーターが「わらじ」という。それをテレビで流すのだから、その番組制作の関係者が、「ぞうり」と「わらじ」の区別がつかないと言うことだ。
言葉は生き物。時代によって代わっていくのだから、仕方がないんでしょう。
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このところ芸能人が亡くなったり、麻薬でつかまったりと、話題が多い。最も多く取り上げられているのが酒井法子の麻薬問題。でも、私にとって一番大きな問題は、大原麗子が亡くなったこと。白馬童子(芸名は何だったっけ)もなくなったけれど、やはり大原麗子だな。ファンでした。女優が亡くなって淋しい感じがするのは、夏目雅子以来です。
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いつも選挙の時期になると、某宗教団体の人が、投票を頼みに来る。これまで1度も入れたことはないけれど、「ああそうですか。はい、はい」ってなことをいっていた。しかし、もう歳なので、愛想のいい顔をするのもいやになった。今回初めて「いやです、入れません」とお断りする。
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それにしても、今度の総選挙、民主党のひとり勝ちになるのだろうか。今度は政権交代をしてもらわなければ困ると思っているけれど、右でも左でも、人々が一定の方向に、わーっと流れていくのは心配だな。われわれ日本人は、集団ヒステリーにかかりやすいような気がしている。
戦争中はみんな熱狂して「鬼畜米英」などと叫び、「大和魂」という精神力で戦争に勝つと信じ、戦後はアメリカ崇拝になった。やがて今度は安保反対で熱狂し、郵政改革では何が何でも小泉だった。みんな集団ヒステリーだ。
そのうち、どこかの国を「討つべし」なんて言うんじゃないだろうね。
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御伽婢子・78
ひげ長の国・1(御伽婢子第8巻)
原作 浅井了意
現代語訳 ぼんくらカエル
越前の国、北の庄に1人の商人が住んでいた。毎年木綿、麻布を持って松前(北海道)に渡り、昆布や干しアワビと交換して持ち帰った。
ある年、松前に向かう船が嵐に遭い、帆柱は折れて漂流を始めた。幸いにも一つの島に流れ着き、上陸することが出来た。人家はないかと思いながら岸から500メートルも歩いただろうか、多くの人が立ち働く人里を見つけた。
その人たちは、みんな髪が短くてひげが長い。どうやら日本語が通ずるようである。
「ここは何という国ですか」
「長ひげ国」
「国主は何処にいますか」
「1里ばかり先」
住民に教えられていって見ると、なるほど立派な城郭がある。商人が惣門に近づいたら、門番たちが商人に向かって丁重にお辞儀をする。そして見慣れない装束ではあるが正装した者が出てきて、商人を奥に招き入れた。
宮殿の様子は、天上から床まで、金銀をちりばめ、宝石を飾り、紫檀、黒檀、白檀などの香木をふんだんに使い、きらびやかなこと、このうえもない。
「大日本国より、珍客が来られた」
国主の知らせで、一族の者がぞくぞくと集まってきた。いずれも、背が低く、髪は短くひげが長い。幾分か腰が曲がっているように見える。
黄色の栗、紫の菱をはじめとし、山の珍味がうずたかく積まれた。まことに美味で、人間界の食べ物ではない。ただ不思議なことに、海のものがなにもない。
国主は水晶の盃に銘酒を酌み、菊の花を浮かべて商人にすすめて言う。
「私には娘が1人ある。あなたはここにとどまって、婿になってくれませんか。栄華は欲しいままですよ」
「仰せに従います」
商人は国主の婿になることが嬉しくてしょうがない。盃を数杯傾けた。
続く
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