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2009年5月26日 (火)

阿修羅像を見に行かざるの弁 真紅の帯・3

5月26日(火)

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この画像、前にブログに載せました。

興福寺の阿修羅像は、私のもっとも好きな仏像です。というより、私の見たあらゆる彫刻の中で、最高のものと思っています。興福寺で阿修羅像を見たとき、私は体中から力が抜け、恍惚としてしまいました。彫刻を見てこんな気分になったことは、後にも先にもこのときだけです。

そのことも、前にブログに書いたと思います。東京で阿修羅像の展示がありましたが、結局私は行きませんでした。行っても、がっかりするだけだと思ったからです。どのみち満員で、人の頭を見に行くようなものでしょう。

実を言えば、興福寺で再び見るとしても、私にはためらいがあります。

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あのときと同じ感動はえられないと思うからです。興福寺で初めて阿修羅像を見たときと今では、私の感性も心理状態も違います。とても、恍惚感に浸るわけにはいかないでしょう。見るたびに感動を新たにすると言うならばいいのですが、そうはならないだろうという予感があります。

あの感動は1回限り、そんな気がします。

鉛筆画の方ものせてみました。少し気に入らないところもあるのですが・・・。顔も違うナア。

御伽婢子・15

真紅の帯・3

前回までのあらすじ 越前敦賀の人、檜垣平次は、幼なじみの浜田長八の姉娘と婚約していた。しかし織田と朝倉の戦があり、朝倉と縁のあった平次は巻き添えになるのを怖れて、京へ逃れた。5年後に帰ってみると娘は死んでいた。49日に仏寺から帰った長八の妹娘が、乗り物から何かを落とす。平次が拾うと、昔、姉娘に送った真紅の帯だった。その夜、妹娘が長次のもとに忍んでくる。

そのまま家に入った妹娘が言う。

「真紅の帯を落としたのを、あなたは拾ったでしょう。あなたとは深い因縁があるのです。私たちは一緒になりましょう」

「その申し出には驚きます。私はあなたのお姉さんと婚約していたのです。今はあなたのご両親のお世話になっています。そんなことが知れたら、ただでは済みません。許されることでは無いのです。どうぞ、帰ってください」

「いいえ帰りません。私の父は、すでにあなたを婿と思って、このようにあなたを自分の家の離れに住まわせています。私が忍んできたのに、その気持ちを受けてくれないのであれば、自殺するしかありません。そして、あなたに恨みを残すでしょう」

そうまで言われては、平次もどうすることも出来ず、その夜二人は契りを交わした。そののちは、娘は夜に来て朝に帰る日が続いた。1ヶ月ほどして、娘が言った。

「これまでは人にしられなかったけれど、こういう事は洩れやすいものです。もし洩れたら、どんな結果が待っているかも知れません。駆け落ちをしましょう」

平次も娘に情が移っていたので、共に逃げることにした。三国に知人がいてそこを頼っていった。知人は快く平次たちを迎え入れ、そこで1年ばかり過ごした。またも娘が言う。

「二人が駆け落ちして1年が過ぎました。両親は心配して、もう許してくれているでしょう。これからふるさとへ帰りましょう」

平次も、もっともと思い、一緒にふるさとの敦賀に帰った。そして娘を舟に残して、1人で浜田長次の家に行き、娘と共の駆け落ちをしたわびを言った。そして、もう1年も経つのだから許して欲しいと頼んだ。

両親は怪訝な顔をした。

「あなたは何を言っているのだ。妹ならば家にいる。病が重くて、このところ寝たきりだ。あなたと一緒に行くことなどで来はしない」

そこで平次は、真紅の帯を出して見せたところ、浜田夫妻は大いに驚いた。

「その帯ならば、姉娘が亡くなったとき、一緒に墓に埋めたものだ。何でまたそれが・・・」

平次が娘を舟に残してきたというので、長次が人を使って見に行かせたところ、舟には誰もいなかった。

家では、寝たきりだった妹娘が立ち上がり、うわごとのように何かを言い始めた。

「私は平次と婚約していたのに、病を得て先に死んでしまった。墓の中に入っているけれども、平次とは深い縁があるので、今ここにいる。どうか私の妹を、平次の妻にしてください。それが私の願いです。そうすれば、妹の病気も良くなるでしょう。もしそうしてくれなければ、妹も私と同じ運命が待っています」

家の者は、みんな驚きあきれた。その姿は妹だが、声も仕草も姉とそっくりである。長次が聞く。

「死んだものがなぜ執念深く、また出てきたのか?」

「平次との縁は非常に深いものがある。閻魔大王の許可を得て、1年あまり平次の妻として過ごした。しかし、もはやあの世に帰らなければならない。私の言ったことを忘れないでください」

そう言うなり、娘はばったりと倒れた。人々は驚いて娘の顔に水を掛けたら、妹は蘇り、病もないような元気な姿になった。

その後、平次と妹娘は夫婦となり、姉の仏事をないがしろにせず、平穏に暮らしたという。

                        終わり

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