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2008年8月29日 (金)

ネズミの妖怪・1

8月28日(木)

鼠の妖怪・1(狗波利子・通算73回)

    原作・浅井了意   現代語訳・ぼんくらカエル

応仁(1467-1469年)年中、京の四条のほとりに、徳田という大商人がいた。家は富み栄え、財宝は倉庫に溢れるほどだった。

その頃、世の中は大いに乱れて(応仁の乱)、戦が止むことはなかった。特に、山名、細川の両家は、権を争い、野心満々で、たびたび戦っていた。そのため都は荒らされ、人々は怖れとまどい、深い淵の上で薄氷を踏むような生活をしていた。

徳田も都がいやになり、北山と賀茂のあたりに親戚があったので、引っ越していけるような家を探してもらった。賀茂の在所に古い御所があったのでそれを買い、山荘としてしばらくそこに住むことにした。

しかしながら、長く人が住んでいない古い屋敷なので、荒れ果てて、軒は傾き、垣は崩れている。さしあたって掃除をし、何はともあれ、引っ越しを済ませた。

京にいる親族たちは、お祝いに集まってきた。徳田は大いに喜び、客を家に入れ、終日酒宴を催した。詠い、踊り、夜には主客とも酔いつぶれて、前後も知らずに寝てしまった。

夜中に、急に大勢の足音がして、誰かが門を叩く。主人がいぶかりながら戸を開けると、盛装をして、立派な髭を蓄えた人が立っていた。

「私はこの屋敷のもとの持ち主です。私に息子がいて、今日結婚します。その婚礼の儀式をしたいのですが、私の今の家は狭くて汚いのです。今夜だけ、この屋敷を貸してください。朝になったらそうそうに立ち去ります」

そう言い終わりもしないうちに、大勢の者がどかどかと入ってきた。提灯が大小200あまり、2列になって、建ち並び、まず飾り立てた腰が入り、続いて、数々の乗り物が入る。その後ろに供の女たちが、おしゃべりをしながら入る。そして、60歳以上と思われる老人が、大小の刀を差して馬に乗り、歩行の侍6,70人を引き連れているのは、前後を守護しているものと見える。

漆塗りの立派な長持ち、はさみ箱、衣類懸け、屏風、貝あわせの貝を入れる桶など、次から次にと持ち込まれる。

さらには、身分あるものない者など2~300人、が家の中やら庭に入って、酒宴が始まった。山海の珍味を並べ、かつ唄い、かつ踊る。

めでたい席なのだからと、主人や客人も誘い、共に唄い興じる。

新嫁は、まだ14.5歳に見える。少し細めで、色白く、たぐいなき美人である。まわりの女たちもなかなかの顔立ちである。みんなで新婦の手を取り、今日はどうしても飲ませると迫るけれど、新婦は嫌がって、あちらこちらへと逃げる。それを捕まえようとして騒いでいる内に、強い風が吹き、明かりがすべて消えた。主人と客は驚いて、あらためて灯を付けてみると、誰もいなくなっていた。

                       続く     

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