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2008年8月10日 (日)

板垣信形天狗にあう・2

8月10日(日)

板垣信形天狗にあう・2(狗波利子・通算59回)

(前回のあらすじ、板垣信形は羽黒山の山伏たちをもてなし、酒宴を行う。僧たちの先達は大変感謝して、信形に奇跡をお見せするように、と、他の山伏達に命ずる。)

山伏たちは、膳の上に置いてあった箸を集め、なにやら唱えながら印を結んだ。そしてその箸を、座の傍らの暗いところに放り投げた。

しばらくすると、身長が30センチくらいの鎧武者が100人ばかり出てきた。信形とその子、弥二郎は、目をこらしてみた。座敷の真ん中に、陣形を建てている。

先達の山伏は、戦の様子をお目にかけなさい、という。

次席の山伏は座を立って、ムカゴを掴み、後ろの方に投げた。すると今後は小さな鎧武者が200人ばかり、戦の陣形をして現れた。

両軍は互いに挑み戦う。

「えいえい、おう!」

などとときの声を上げ、うめき、叫び、突き合い切り合う。人間の戦と少しも違わない。首を取ったり差し違えたり、しばらく戦ったのちさっとひいたように見えたが、箸の先にムカゴを突き刺していた。

信形は先達に言った。

「私は武田家譜代の家来だけれども、戦いではいつも先陣を切り、強敵を倒してきた。敵がどのように防ぐとも、破らなければ帰らないという気持ちで、後れをとったことがない。向かうところ、必ず討ってきた。

世の中には勇気のある者はまれで、卑怯者が多い。軍法には、日取りも方角も入らない。勇気さえあれば、小勢でも大勢の臆病者をやっつけるに手間暇はいらない。

わが子、弥二郎は少し気が弱いので、私のようにはいかないだろう。何か戦に勝つよい方法があったら教えてくれませんか」

「よい方法は、あるにはあるが、大勢の中では言えない。あなた1人に教えましょう。他の者たちを遠ざけてください」

信形は、弥二郎はじめ、家に仕える者たちをみな下がらせた。

しばらくは、先達が何事か指導をし、下座の山伏が竹刀で受けている音が、部屋の外に聞こえていた。

                         続く

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