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2008年8月26日 (火)

五条の天神・2

8月26日(火)

五条の天神・2(狗波利子・通算71回)

(前回のあらすじ・医師・寿玄斎は5条の天神に深く帰依していた。ある夜、不遇を託つ玄斎の夢に、五条の天神が現れて、玄斎に諭して話す。その話しが続く)

今の世になって、人道はますます乱れ、子は親を殺し、臣は君の隙を狙う。上の者は政道を考えることなく、下の者は忠誠心を失う。

君主たる者は仁義に暗く慈悲の心を持たず、税と課役を重くする。国民をむさぼり、家臣を苦しめる。そして自分だけが愉しむ。

こうして得た富を誇り、順序を越えて位階の進むことをのぞむ。能もなく知恵もなく、やることはわがままかってで、善悪、邪正もわきまえない。へつらう者を可愛がり、忠孝心のある者に罪をかぶせる。

たまたま武芸学問に志を持つ人も、禄を得て名声を求めるためで、人のために尽くす気持ちは少しもない。

およそ学問武芸というものは、聖人賢者の求めたところを求め、探るもの。出世を求めるものではない。

切磋琢磨して自分を磨きもせず、目新しい小さな利益に走り、先人の堂々たる道を捨て、奇襲を行う。正攻法の奥深さを知らない。熱心に聖賢の書を読んでも、やることは邪だ。仁義の心なく、学問を持って利欲に代える。君にへつらい、友を妬む。もともと誠がないのだから、利がありと思えば義を忘れる。欲のために道義を忘れ、遊興を好み、富貴栄花の者をうらやみ、美しく着飾ることを好む。

このように、君主は下の者をむさぼり、栄花を極める。臣は上にへつらい、贅沢をする。

そこに必要とする富は、天から降るわけではないし、地から湧くわけでもない。これはみな人民の汗の結晶を搾り取ったものである。

こんなことをしていれば、天下は再び乱れて、人民は苦しむ。賊どもは互いに国を争い、大なるものは少なるものを呑み込み、強い者は弱い者をくじく。争いは至るところに起こり、飢饉疫病が流行る。天下に身を置く場所もない。

寿玄斎よ。お前はこんな世の中に生まれたのだ。自分の不運を嘆いて、少しばかりの禄にありつこうと願っても、無駄なことだ。そんな禄はいつふいになるか判らないし、かえって災いになることもある。

しかし、お前に一つの霊法を教えておこう。水上の浮き草に疫病をいやす効能のあるものがある。沢山集めておいて、時を待ちなさい。

・・・・・

今の世のありさま、将来の事変、あきらかに教えてくれたと思えば、玄斎は夢から覚めた。夜はほのぼのと明けようとしている。

                    続く

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