« ネズミの妖怪・1 | トップページ | 不公平 »

2008年8月29日 (金)

鼠の妖怪・2

8月29日(金)

鼠の妖怪・2(狗波利子・通算74回)

(前回のあらすじ・徳田という商人が応仁の乱で荒廃する京都を避けて、賀茂の方に隠棲することにした。新居のお祝いをしていたら、その家の以前の住人が、一晩だけこの家で婚礼をさせてくれと言って大勢を引き連れてやってくる。どんちゃん騒ぎの跡、ふいに人がいなくなる。)

夜が明けてみると、婚礼用具として持ち込んだものは何もなくて、この家の主人徳田の家具、道具類、秘蔵していた茶の湯の道具まで、ことごとく引き散らされていた。割られたり破かれたり、まともな物はなかった。ただ、床の間にかけていた、牡丹の下に猫が眠っている絵の掛け軸だけが、無事であった。

「これは何かよくないことが起きるのではないか」

と、人々は眉をひそめてささやきあった。

ここに、村井澄玄という老儒がいた。博学博識の儒者が言った。

「怖れることはない。これは老いた鼠の妖怪の仕業だ。鼠は猫を怖れるから、猫の絵には近づかなかったのだ。このような霊は昔からよくある。『ものはその天を畏れる』という諺がある。二つ三つその例を挙げましょう」

と、次のような話しをした。

昔、ある村の子供が、かえるが数10匹、汚れた池の草陰に集まるのを見た。これを捕まえようと思って近づくと、大きな蛇が茨の下にいて、悠々と蛙を食べている。蛙は凝り固まって、逃げもせず食われるのを待っていた。

また、ある村の年寄りが、ムカデが蛇にあうのを見た。ムカデは急いで蛇に近づいていく。蛇は動かずに、口を開いて待っている。ムカデはその蛇の中に入り、しばらくして出てきた。その時すでに、蛇は死んでいた。年寄りはその蛇を山の中に捨てた。10日くらいしてそこへ行ってみると、無数の小さなムカデが、その蛇の肉を食っていた。ムカデは蛇の中に卵を産んだのである。

またある人が、蜘蛛がムカデを追いかけているのを見た。ムカデは切り倒された竹の中に逃げた。蜘蛛は中へは入らず、竹の上で腹を何回もゆらして去っていった。そのままムカデは出てこない。竹を割ってみたら、ムカデはすでに腐り爛れて、味噌のようであった。これは蜘蛛が排泄物をムカデにかけたためである。

「ものが天を畏れるというのはこういう事です。鼠が猫の絵を畏れるのも同じです。鼠の妖怪などに好き勝手をさせてはいけません。鼠穴をたどって、鼠狩りをしなさい」

そこで、鼠穴をたどっていくと、屋敷から100メートルほど離れたところに、石ころの重なった小高いところがあった。その下に大きな穴があって、年を経た鼠が沢山群がっていた。それを全部捕らえて殺して埋めた。

その後は何事も起こらない。

                      終わり

|

« ネズミの妖怪・1 | トップページ | 不公平 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/118203/23327410

この記事へのトラックバック一覧です: 鼠の妖怪・2:

« ネズミの妖怪・1 | トップページ | 不公平 »