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2008年8月 4日 (月)

天狗にとられた子の物語・2

8月4日(月)

天狗にとられた子の物語・2(狗波利子・通算54回)

(前回のあらすじ・伏見の藤の社の息子次郎は、知恵遅れだったが正直者だった。ある時、急に行方不明になり、5年後に帰ってきた。そして、5年間の経験を語り出す)

私は今年で22歳、よそを巡り歩いて5年になる。

私がこの土地を離れたのは8月(旧暦です。現在なら9月ごろ)の初めだった。ようやく風も涼しくなり、稲の穂が出かかっていた。どこから来たとも知れぬ、がっしりした僧が近づいてきた。紅初めの衣の上に紫の袈裟を懸け、手には水晶で出来た角張った数珠を持っている。その僧が私に話しかけた。

「次郎。私についてきなさい。悪いようにはしない」

言われた通りついていくと、まるで空を飛ぶようにして、京の東、如意ヶ岳という山に行き、岩に腰をかけて休んだ。すると、見かけぬ小法師達が出てきて、食べ物を持ってきた。何という食べ物かは知らないが、まことにおいしかった。

日の暮れ方になると、僧が言った。

「これから驚くようなことが起こる。しかし、お前は怖れる必要はない」

どんなことが起こるのかと思っていると、同じような格好の僧が7,8人出てきた。空から鉄の釜が下りてきて、岩の上にしっかりとすえられた。さらに、鼻が高く、目が大きい、両脇に翼がある法師が3人現れた。いずれも足は鳥のようで、柿色の衣を着け、腰には太刀を差している。たすきを掛け、衣の下をはしょり、働き者のかいがいしさを見せて、鉄の勺を釜に差し入れ、銀の茶碗に煮えたぎった銅の湯をもり、7,8人の並み居る僧に差し出した。

僧たちは恐れおののく表情を見せたが、その湯を飲み干した。僧たちは倒れ伏し、頭から黒い煙を上げ、焼け棒杭のようになった。空には、バクバクと鳴り響く音がした。

ややあって、僧たちは夢から覚めたように起き上がり、もとの姿に帰った。そして礼儀正しく挨拶をして別れていった。

初めの御僧は

「このありさまを、けして人に語るな。今日は疲れただろうからもう寝なさい。そして、明日は早く起きなさい」

と言って岩屋に入った。

                       続く

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