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2008年8月 7日 (木)

天狗にさらわれた子の物語・5

8月7日(木)

天狗にさらわれた子の物語・5(狗波利子・通算57回)

(前回までのあらすじ・社家の子、次郎は天狗の僧につれられて、諸国を見、不思議な体験をする。伯耆の国大山では、大道を踏み外して魔道に入ってしまう人間の性を聞く)

この話を聞いて、多くの僧、法師達は怖れわなないた。しかし、体を柱に縛り付けられていて、動きがとれない。空から猛火が下りてきて、一同は宮殿もろとも燃え上がり、うめき声を上げ、泣き叫ぶ声と共に焼き尽くされた。次郎だけは繋がれていなかったので、遠くの谷に逃げ延びた。

しばらくすると、天狗の僧が来て、次郎をつれて山を出た。振り返ってみると、宮殿も楼閣も、すべて消え失せていた。

こののち次郎は、僧につれられ、西国をくまなく巡り歩いた。また京に帰ろうと言うことになり、播磨の港で船に乗せてくれと頼んだところ、船頭たちはにべもなく断った。

僧は腹を立てて、沖に向かって印を結んだ。

すると、にわかに黒雲が辺りを覆い、大風が吹いて、海は闇夜のように暗くなった。波は高く、雪の山、砂の山のごとく、沖の船はフライパンから放り出されるようだ。岸に帰ろうとしてもかなわず、船子たちは伊勢神宮の方に向かって拝み、観音経を読んだ。

夕方になってやっと風と波がおさまり、船は室の津や、兵庫の港に吹き寄せられて岸に着いた。それでも、命が助かったことを喜ぶ者が多かった。

僧は次郎をつれて山崎にいたり、、都に入った。

5条河原で「能」があるという。都の人々は貴賤上下を問わず、見物に集まっている。桟敷にはさまざまな幕を張りながら、お偉方が誰彼となく見物に来ていた。僧は次郎をつれて見巡ったけれども、誰も二人に気づく人はいない。

                     続く

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