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2008年7月19日 (土)

掃部新五郎遁世捨身・2

7月19日(土)

掃部新五郎遁世捨身・2(狗波利子・通算42)

(前回のあらすじ・上杉憲政の家臣掃部新五郎は徳之丞と言う14歳の田舎の少年に恋をし、わりない仲になった。徳之丞は17歳の時、重い病のかかる)

親や親族は、何とも出来ずにただ手をこまねいていた。

そんな中で、徳之丞はむっくりと起き上がり、新五郎の手を取り、

    すゑの露浅茅がもとを思ひやる

            我身ひとつの秋の村雨

と詠んで息絶えた。新五郎は悲しく哀れに心迷い、同じになりたいと願ったが、その甲斐もない。野辺の送りを行い、徳之丞の亡骸を苔の下に埋めて墓の主とした。そして自らは、墓の前で髪を切り、家にも帰らず、そのまま遁世した。

     のがれてもしばし命のつれなくば

            恋しかるべきけふの暮れかな

と詠み、足にまかせて立ち去った。

その後新五郎は、西国に行き、霊仏霊社を拝みつくし、次の年の4月ごろ故郷に帰り、人知れず徳之丞の墓に立ち寄った。草はぼうぼうとして、露のみが溢れていた。哀れ昔を思い、面影は忘れられない。

新五郎が涙ながらに念仏をすると、墓の向こうに徳之丞が現れて、影のごとくしょうしょうと立った。新五郎が近づくと、かき消すように姿を消した。

心を静めて経を読み、跡を弔い、泣く泣く立ち去った。東国の方に行ったが、世の中はいっこうに静かにならない。行く末も見えた。この先長らえても何ほどのことがあろうかと思い、松の枝に、

    露の身のおき所こそなかりけれ

              野にも山にも秋風ぞふく

と言う歌を結びつけ、傍らの、あなしの池という池に身を投げて死んでしまったのこそ哀れである。

たまたま知る人があって、死体を水から取り上げ、徳之丞の墓の前に埋めたということだ。

                         終わり

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