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2008年6月14日 (土)

地震、他  甲府の亡霊・2

6月14日(土)

地震、他

こんどは日本で大地震。

岩手内陸南部で震度6強。私の故郷秋田内陸南部は震度5。

死者は現在のところ3名。行方不明者12名。

次女からビールのおくりもの。今日か明日かが父の日らしい。

甲府の亡霊・2(狗波利子・通算27回)

    原作・浅野了意  現代語訳・ぼんくらカエル

(前回のあらすじ・好雲という僧が諸国修行中に甲府で賤ヶ屋に宿を取った。宿の主は、武田家が滅びてからこのあたりは寂れ、異様な出来事も起こる。それでも良ければお泊まり下さいという。)

好雲が寝ていると、17,8の女が部屋に入ってきた。美しく、雪のように白い肌で、後れ毛が鬢のあたりにかかっている。女がほほえみながら話しかけた。

「秋空は静かで、独り寝は物寂しいですね。虫たちが夜もすがら鳴き通し、月影に風がそよぎます。桐の葉も静かに落ちるこんな夜を、一人で過ごすのも淋しくて尋ねて参りました。

    草の葉も露も我が身の上なれば

           ほさぬ袖だに月やどるらん

この歌はいかがですか。お坊様、目を開けて下さいな」

好雲は何も言わなかった。女はさらに話しかける。

「今夜はこの賎ヶ屋にも月影が美しく差し込んでいます。共に酒を酌み交わし、旅の心を慰めましょうよ」

それでも好雲は返事をしなかった。女は重ねて言う。

「なんでそのように何も言わないのですか。まるでくちなしのようですね。たとえば恋の闇に迷う人でも、まだうち解けなくても、一言くらいは話すものですよ。なんでそれほどまで黙っているのですか」

    いかにかく問えど答へぬくちなしの

            花も染まれば色に出るを

また、声に出して詩を吟じた。

    黄帝上天の時   鼎湖元ここに在り

    七十二玉質    化して黄金の宝を作る

それを聞いても、好雲はものを言わなかった。

やむを得ず、女は座を立って、帰るかに見えたが、そのまま跡形もなく消え失せた。

女は好雲の心を乱れさせようとしていたのである。最後の詩は、中国の昔の伝説を言っている。黄帝は鼎湖というところから龍にのって天に昇った。その時72人の玉女が黄金の宝に変じて、地中に埋められたという。もし好雲が女に心を許して戯れるなら、武田の埋蔵金のありかを教えますよという謎である。 

人の心を惑わすものは、色と欲である。好雲は世を捨て、立派に修行をしたので、なんの災いも起きなかった。

やれやれ、安心して寝ようと思ったところ、こんどは庭の方が騒がしい。もはや丑三つ時で、月は傾いている。

三メートルに近い大男が、手に五,六ッ個の骸骨を持って、好雲の部屋に入ろうとした。好雲は起き上がり、手元に置いていた棒をとって、横に払った。その大男は倒れたように見えたが、骸骨共々消え失せた。

小屋の主が起きてきて、灯をともし、庭に出てみたが、なんの変化もない。

次の朝、東の空に横雲がたなびく頃、好雲は旅立っていった。誰もその行く末を知らない。

                           終わり  

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