芋苗を植える 交野忠治郎発心
5月26日(月)
芋の苗を植える(ぼんくら日記)
精障者作業所Mへ。
Mの畑に、サツマイモの苗を40本植える。この前、畑を起こし畝を作っておいたので、今日は植えるだけだ。作業としては楽なもの。昨日雨が降ったので、畑はちょうど良いぐらいに濡れている。これで今晩雨が降ってくれればと願ったら、上手い具合に夕立があった。
これまでに、消石灰を撒き、鶏糞を鋤込んである。サツマイモというのは、肥料はそれほどいらないと思っているが、間違っているだろうか。どちらかといえば、さらさらした土の方が向くというのが、私の考えである。農家ではないから、本当のところは分からない。後は結果待ちだ。
交野忠次郎発心(狗波利子 巻2の1 通算11回)
大阪、交野(かたの)の里に水崎忠次郎宣重というものが住んでいたが、もとは静岡の今川氏の家来だった。今川氏が滅びて浪人となり、交野に住みつき、妻をめとった。
もとより武士であるから、百姓仕事は出来ず、商売をする才覚もない。ただ、良い主君に巡り会い、戦で手柄を立て、一旗揚げたいと暮らしていた。しかしそのような機会もなく、朝夕の食事にも事欠くほど貧しくなってしまった。
ある夜、寝物語に妻に語った。
「前世の報いなのかどうか、こんなに貧しくて、つらい思いをさせること、まことに面目ない。主君に恵まれて世に出ることが出来たら、少しはよい思いもさせてやれるのに」
妻は答える。
「こんな田舎に引きこもって、何度生まれ変わったところで、良いことなどあるとは思えない。世を渡るすべもない。このような生活を続けていれば、いずれは、道ばたのどぶに落ちて飢え死にするしかない。いっそのこと追いはぎでもやって、金品を奪い、私にも楽をさせてください」
忠治郎は、侍として、曲がったことは何もしないで生きてきた。しかしながら、情を持って契りあった妻の言葉に逆らえず、辻斬りの決心をした。
夜の明けるのを待ちかね、刀を抱え、人通りの少ない野の末、草むらに隠れて、手頃な相手を待っていた。
そこへ通りかかったのが、17.8歳の女性と、それに従う小袋を持った女の子である。前後の人影がないことを確かめ、忠治郎は刀を持って立ちはだかり、そのまま二人を討ち殺した。そして二人の女の着物をはぎ取り、小袋を奪って、家に持ち帰って、妻に与えた。
「17.8歳の美しい女だった。誰かの妻だろう。可哀想なことをした」
といったが、妻はなんの感情もあらわさず、井戸のそばへ行き、水を汲み、嬉しそうに笑いながら血の付いた着物を洗っている。
忠治郎はその顔を見、心根を考えると、急に妻が疎ましく思えた。とてもこの女とは暮らせないと思い、即座に髪を切り、家を出た。
その後はただ、足にまかせて諸国を歩き、ひたすら修行をするばかりである。
3年ほどたったときに、大和の吉野に巡ってきた。山のほとりで日が暮れ、どこかに宿を借りようと思っていたところ、道の辺にあばら屋が見え、幽かに灯がともっている。立ち寄って戸を叩くと、
「どなたですか」
と、若い法師が出てきた。
「諸国を修行している聖です。今宵一晩、宿を貸していただけませんか」
「おやすいご用です。どうぞお入り下さい」
若い法師は忠治郎を招き入れ、粟入りの飯を出してきた。そして自分は、持仏堂に向かって念仏を唱える。忠治郎が見ていると、しきりに涙を拭っている。食事を終わって、忠治郎も供に念仏を唱えたが、何とも哀れに思えて、涙が流れた。
念仏が終わってから、二人は身の上話を始めた。
続く
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