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2007年9月 2日 (日)

句集「春北風」、他

9月2日

H君の訃報

マルエツの買い物に行くつもりで歩いていると、トラックがプップッと警笛を鳴らして、歩道よりに停まった。見るとN工芸の社長である。トラックのドアを開けて中には入れという。トラックの中で、しばらく雑談。

「H君が死んだ」という。今年の春、癌でなくなったそうだ。

H君というのは、じつはとんでもない男で、刑務所に3回ほど入っている。その合計が20年にもなるという男だ。最後は、破廉恥罪だったが、前には、殺人未遂なんて事もやっている。そのくせ、妙に人なつっこいところがあって、普通につきあうだけなら憎めない。それなら、本当に心を許せるかというと、やはりそうはいかない。刑を終えて(償って)出てきたのだから、他の人と同じ気持ちでつきあえ、というのは正論かもしれないが、こちらはそれほど人間が出来ていない。遊んだり酒を飲んだりするときは普通につきあうが、何かの時、覇気において負けないようにしようという気持ちはあった。私より5歳くらい若いのだから、こちらが老いぼれたとき、寝首をかかれないとも限らないのだ。

H君に最後にあったのは、去年の秋だったと思う。彼から電話があって、会いたいという。外で待ち合わせて、大和の湯へ連れて行った。風呂に入って、一杯飲んで、歩いて帰ろうとすると、いくらも歩かないうちにハアハア言い出した。その時、私はいくらか安心した。少なくとも体力は、私の方が数等上だ。たとえ彼が危害を加えようとしても、不意打ち以外ならむざむざやられることはないと思った。

その頃から癌があったのだろうか。

句集『春北風』出縄明夫著

 I さんから上のの句集が送られてきた。「春北風」と書いて「ハルナライ」と読むらしい。出縄明夫は俳号で、本名は出縄明。社会福祉法人進和学園の創立者で、現理事長。(進和学園は知的障害者の施設)。その名前だけは知っていたが、俳人であるとは知らなかった。藍綬褒章や、勲五等瑞宝章などを受章されているようだ。

『毎日俳壇』の特選、ないし準特選の俳句だけ七〇句をまとめた句集である。昭和 30年から32年までは飯田蛇笏の選。昭和四七年から平成六年までは飯田龍太の選。平成六年から九年までは大嶺あきらの選である。

昭和二九年『雲母』に出句した〈盲鍼師まことの汗を拭きにけり〉という句は、飯田蛇笏によって「作者における一代を負う作品の一つたり得るものであろう」と評されている。

私は、俳句がなんであるか、まだその尻尾も掴んでいないような人間であるが、この句集からは、何か作者の気品のようなものが伝わってくる。

   一生を仕事着の紺春鴉

   白露や葬列とまる開拓碑

   白露や遺品の中のいのち綱

   炎天や盲学校の千羽鶴

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