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2006年8月30日 (水)

かまくら伝説

かまくら伝説 1

よんじゃめぐり

 慎くんはお父さんに連れられて、秋田県の南の端の、おばあさんの家に来ています。そこは小さな村で、お父さんのふるさとです。

 雪が慎くんの背の高さより、もっと深く積もっています。こんな深い雪を、慎くんははじめてみました。それがめずらしくて、寒いにもかかわらず2階の窓を開けて、外ばかり見ています。

 雪はしんしんと降っています。あたり一面がミルク色に煙っています。静かです。その静けさを破って、子どもたちの歌声が聞こえてきました。

「お父さん、あの歌、聞こえる?」

「歌? うん、そうか。今日は“よんじゃめぐり”だったのか。まだあんな行事をやっているんだなあ・・・」

 お父さんは目を細くして、昔を思い出しているようです。

「ねえ、お父さん“よんじゃめぐり”って何なの」

「ああ、あれはね、旧暦の1月15日に子どもたちが集まって、村中の家を廻って、鏡餅をもらって歩く行事さ。あとで、みんなでお餅を食べるのが楽しみでねえ・・・」

「ふうん。歌がだんだん近づいてくるね」

 慎くんは窓から首を出して、耳を澄ましました。子どもたちの、元気のよい歌声が近づいてきます。

   ヨンジャアメグリ

   ヨンジャアメグリ

   カーンナベカケレ

   シッキャサケカケナ

   アマサケカケレ

   モチアブレ

   ホーイ  ホーイ

「変な歌だなあ。どんな意味なの」

 慎くんが聞いたので、お父さんはその歌詞を紙に書きました。

   よんじゃあめぐり

   よんじゃあめぐり

   寒鍋かけれ(寒の鍋を火の上にかけなさい)

   しっけぇ酒かけな(辛い酒をかけないで)

   甘酒かけれ(甘酒をかけなさい)

   餅あぶれ(餅を焼きなさい)

   ほーい  ほーい

「“よんじゃめぐり”っていうことばの意味は何?」

「うーん“よんじゃめぐり”の意味ねえ・・・分からないなあ。そういえば誰からも聞いたことがないねえ」

 そういわれると、慎くんはかえって知りたくなります。“よんじゃあめぐり、よんじゃあめぐり”と頭の中でくり返しました。

 子どもたちの歌声がますます近づいてきます。とうとう家の前まできました。おばあさんが鏡餅と小銭を持って、玄関の前に出ました。

   よんじゃあめぐり

   よんじゃあめぐり

   寒鍋かけれ

 子どもたちは歌をうたいながら、家のまわりをまわります。腰まで雪に沈みながら、漕ぐようにしてまわるのです。

   しっけぇ酒かけな

   甘酒かけれ

   餅あぶれ

   ほーい  ほーい

 子どもたちは、家のまわりを2回まわってから、鏡餅を受け取りました。

「慎、今日は横手の“かまくら”だよ。お父さんに連れて行ってもらいなさい」

 子どもたちに鏡餅を渡して、家に入ってきたおばあさんがいいました。

「そうだな、慎に“かまくら”を見せてやるか」

 お父さんがいいました。

「お父さん、“かまくら”ってどんな意味?」

「おや、また意味を聞くのかい。それも分からないんだよね」

 困ったな、という顔でお父さんが答えました。

                                             つづく

   

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